Pioneer F-005

Pioneer F-005 をゲット!

2011年12月11日、 Pioneer F-005 の中古を2,500円で入手しました。 FM 専用チューナ です。

このチューナーはバリコン式ですが クリスタルロック で水晶発振器の精度に同調するという珍しい方式です。 このタイプのコレクションが欲しいと思っての入手です。

ワンオーナー品です。

  1. この F-00 シリーズは1977年発売の FM 専用バリコン式チューナで、値段の高い順に F-007, F-005, F-003 がありました。

  2. 私はバリコン式のクリスタルロックのチューナに憧れます



早速、程度&動作チェック

  1. 外観

  2. 入手した状態のまま電源 ON してチェックしました



カバーを開けてみました

  1. 基板の作りはなかなかシッカリしています。 写真をクリックすると拡大写真を表示できます。

  2. フロントエンド部は5連バリコン式です。 以下の豪華な構成です。


  3. IF 部は以下の構成です。


  4. 検波部は [PA3001A] によるクォードラチュア検波です。

  5. FM MPX 部は [PA1001A] による PLL MPX です。 パイロットキャンセラー回路も組み込まれています。

  6. AF 増幅部は [PA1002A] を使用しています。 ここで MUTING 動作も行います。

  7. APC ユニットは写真左側の金属ボックスです。 シールド対策が施されています。



APC の動作原理

  1. Pioneer ではクリスタルロックを APC (Automatic Phase Control) と称していました。

  2. 以下の回路図は Pioneer F-26 の APC ユニットです。 ピン番号の違いはありますが、F-005 のものに近いです。

    1. OSC 発振周波数は Q1 に取り込まれます。

    2. Q2, Q3, Q4 で 100kHz サンプリングします。

    3. R14, R15, R16, C8, C9 で LPF を構成します。

    4. Q5, Q6 で DC 出力化して、この電圧を OSC バリキャップに帰還します。

    5. 1〜4 を繰り返し周波数ロック(クリスタルロック)します。




クリーニング

  1. フロントパネル

  2. リアパネル

  3. 内部

  4. 以上より新品に近い輝きに戻りました。



調整

写真の FM/AM 標準信号発生器 Panasonic VP-8175A (以下 SSG)、 FM Stereo 信号発生器 MEGURO MSG-2170、 周波数カウンタ ADVANTEST TR5822 を使って調整します。 10年も経つとコイルやトリマはズレます。

  

  1. F-005 のプリント基板には部品番号がシルク印刷されていません。 そこで、調整手順で使用する調整ポイントの部品番号を以下のように適当に振りました。 APC 回路の調整がやや難しいですが、逆に APC 回路があることから FM 受信部の調整はやりやすいです。



  2. APC ユニットの調整

    手順 調整箇所 TP 及び調整値 備考
    1 - チューナ基板の TP14〜GND 間を接続 クリスタルロック機能を抑止
    2 TC TP8 = 100kHz±2Hz APC クロック調整 (周波数カウンタで測定)
    3 VR3 TP14 = 7.24V±30mV ロック電圧中点設定
    (TP14 はチューナ基板の TP48 と接続されている)
    4 VR1 TP7 = 1.5Vp-p サンプリング調整 (オシロスコープで観測)
    サイン波が観測される
    5 - チューナ基板の TP14〜GND 間接続を外す  
    6 - TP10〜GND 間を接続  
    7 VR2 TP14 = 7.20V±30mV DCバランス調整
    8 - TP10〜GND 間接続を外す  

  3. FM 受信部の調整

    手順 SSG周波数 SSG出力 F-005 の設定 調整箇所 TP 及び調整値 備考
    1 - - MODE : AUTO
    MUTING : OFF
    REC LEVEL CHECK : OFF
    - -  
    2 - - TP14〜GND 間を接続 - - クリスタルロック機能を抑止
    3 76MHz 60〜80dB
    変調 : MONO 400Hz
    76MHz 受信 L5 S メータ = 最大  
    4 90MHz 60〜80dB
    変調 : MONO 400Hz
    90MHz 受信 TC5 S メータ = 最大  
    5 - - - - 手順3と4を数回繰り返す OSC トラッキング調整
    6 76MHz 20〜30dB
    変調 : MONO 400Hz
    76MHz 受信 L1
    L2
    L3
    L4
    S メータ = 最大  
    7 90MHz 20〜30dB
    変調 : MONO 400Hz
    90MHz 受信 TC1
    TC2
    TC3
    TC4
    S メータ = 最大  
    8 - - - - 手順6と7を数回繰り返す RF トラッキング調整
    9 83MHz 20〜30dB
    変調 : MONO 400Hz
    83MHz 受信 IFT1 S メータ = 最大 IF 調整
    10 83MHz 90dB
    変調 : OFF
    83MHz 受信 IFT2 T メータ = センター(ゼロ) QR 検波調整
    (同調点調整)
    11 83MHz 100dB
    変調 : MONO 400Hz
    83MHz 受信 VR2 S メータ = 4.8 S メータ調整
    12 83MHz 20dB
    変調 : MONO 400Hz
    83MHz 受信
    MUTING : ON
    VR1 ミューティングが
    ちょうど ON になるよう調整
    ミューティングレベル調整
    13 83MHz 90dB
    変調 : MONO 400Hz (100%)
    83MHz 受信 - オーディオ出力電圧 = レベルを記録  
    14 - - REC LEVEL CHECK : ON VR6 オーディオ出力電圧
     = 手順13の1/2 (-6dB)
    REC LEVEL CHECK 調整
    15 - - TP14〜GND 間の接続を外す - -  
    16 - - MODE : AUTO
    MUTING : ON
    REC LEVEL CHECK : OFF
    - -  
    17 83MHz 90dB
    Pilot 信号 : OFF
    変調 : OFF
    83MHz 受信 VR4 TP58 周波数 = 76kHz±200Hz VCO フリーラン周波数
    周波数カウンタで測定
    18 83MHz 90dB
    Pilot 信号 : ON
    変調 : OFF
    83MHz 受信 VR5 オーディオ出力 = 19kHz 成分最小 パイロットキャンセル調整
    19 83MHz 90dB
    Pilot 信号 : ON
    変調 : Stereo 1kHz
    83MHz 受信 IFT1 オーディオ出力 = 高調波歪率最小 IF 歪調整
    ±90度の範囲で調整
    20 83MHz 90dB
    Pilot 信号 : ON
    変調 : R/L ch. only 1kHz
    83MHz 受信 VR3 L/R ch. オーディオ出力 = 最小 セパレーション調整

  4. 調整結果

    1. 動作問題ないと思われても、測定してみると受信周波数の低い部分で感度落ちがありました。 製造後34年経過しているので、こんなものでしょう。 再調整で新品時以上の性能になったと思います。 (2011年12月現在)

    2. 入手直後の状態チェックでセパレーションが出ていると感じていましたが、調整前の実測で L/R とも 40dB 以上ありました。 やはり自分の耳は信用できます。

    3. 調整中にも APC 回路による同調検出はできており、それが水晶発振器の精度なのでトラッキング調整はやりやすかったです。

    4. FM ステレオセパレーションなどは以下となりました。 良好な数値です。

      項目 L R 単位
      ステレオセパレーション 57 58 dB
      パイロット信号キャリアリーク -80 -81 dB
      オーディオ出力レベル偏差 (MONO) 0 -0.06 dB
      REC LEVEL CHECK 信号 -5.97
      339.8
      -6.01
      339.8
      dB
      Hz



使ってみました

  1. このデザインは貴重 です。 豪華そのものです。

  2. 機能関連

  3. 性能・音質とも合格



仕様