Pioneer TX-8900U

Pioneer TX-8900U をゲット!

2015年9月2日に Pioneer TX-8900U のジャンク品を税込1,080円で入手し、9月23日に整備完了しました。

入手動機は検波方式が PBLD であることと、前作の TX-8900 より何が改善されたのか見極めたいと思ったからです。

写真は 照明完全 LED 化 です。



早速、程度&動作チェック

  1. 販売者のコメント

  2. 外観

  3. 入手した状態のまま電源 ON してチェックしました



カバーを開けてみました

  1. 古き良き時代の作りです。 機能別に複数の基板・パーツで構成します。 コストがかかっています。

  2. FM フロントエンド ・・・ TX-8900 と全く同じです。

  3. FM IF 部

  4. FM 検波部 ・・・ TX-8900 と全く同じです。

  5. FM MPX 部 ・・・ TX-8900 にはないパイロットキャンセラー回路が追加されています。

  6. FM MUTING 部 ・・・ TX-8900 と機能的にほぼ同じです。 TX-8900 はリレー式でしたが、TX-8900U は専用 IC の半導体式です。

  7. AM 受信部 ・・・ TX-8900 より RF 増幅が1段追加されています。

  8. TX-8900 → TX-8900U でかなり回路構成が改善されています。



修理

  1. FM 受信時に左チャンネルから音が出ない。

  2. STEREO ランプが点灯しない。

  3. トランジスタの予防交換 ・・・ 必要かチェック

  4. 天板の補修

  5. 残件



照明を完全 LED 化しました

  1. オリジナル状態

  2. インディケータランプ

  3. ダイヤルスケールランプ

  4. 完成

  5. LED 化した感想



調整

写真の FM/AM 標準信号発生器 Panasonic VP-8175A (以下 SSG)、 FM Stereo 信号発生器 MEGURO MSG-2170、 周波数カウンタ ADVANTEST TR5822 を使って調整します。 10年も経つとコイルやトリマはズレます。

  

  1. 調整ポイント

    基板 FM/AM
    区分
    種別 調整ポイント 調整内容 参考図
    フロントエンド FM L T1
    T2
    T3
    T4
    RF トラッキング 図-1
    TC TC1
    TC2
    TC3
    TC4
    L T5 OSC トラッキング
    TC TC5
    IFT T6 IF
    チューナ基板 FM IFT T1
    T2
    T3
    T4
    T5
    IF (WIDE) 図-3
    IFT T6 IF (NARROW)
    IFT T7
    T8
    T9
    T10
    T11
    IF (WIDE/NARROW 共通)
    IFT T12 同調点
    VR VR1 S メータ (1)
    VR2 PBLD バランス
    VR3 S メータ (2)
    VR4 MUTING-1 レベル
    VR5 MUTING-2 レベル
    AM L バーアンテナ
    T13
    RF トラッキング
    TC TC1
    TC2
    L T14 OSC トラッキング
    TC TC3
    IFT F8 IF
    MPX 基板 FM VR VR1 VCO 図-2
    VR2 パイロットキャンセル
    VR3 ステレオセパレーション (WIDE)
    VR4 ステレオセパレーション (NARROW)
    FM/AM VR5 REC CAL レベル

     



  2. 電圧チェックポイント (VP)

    VP 標準値 実測値 判定
    電源基板 3pin +13V +13.1V
    電源基板 6pin +12.4V +12.5V

  3. FM 受信部の調整

    手順 SSG出力 TX-8900U の設定 調整箇所 TP 及び調整値 備考
    1 - FUNCTION : FM MONO
    IF BAND : NARROW
    REC LEVEL CHECK : OFF
    MUTING : OFF
    - -  
    2 83MHz
    90dB
    mono 1kHz
    83MHz 近辺で
    高調波歪率が最小になる位置
    に指針を合わせる
    チューナ基板
    T12
    T メータ = センタ 同調点調整 (QR 検波)
    3 チューナ基板
    VR2
    チューナ基板
    VR2 摺動子 = 0V
    PBLD オフセット調整
    4 78MHz
    90dB
    無変調
    78MHz に指針を合わせる フロントエンド
    T5
    T メータ = センタ OSC トラッキング調整
    5 88MHz
    90dB
    無変調
    88MHz に指針を合わせる フロントエンド
    TC5
    6 手順4〜5を数回繰り返す
    7 78MHz
    30dB 前後
    無変調
    78MHz 受信 フロントエンド
    T1
    T2
    T3
    T4
    S メータ = 最大 RF トラッキング調整
    8 88MHz
    30dB 前後
    無変調
    88MHz 受信 フロントエンド
    TC1
    TC2
    TC3
    TC4
    9 手順7〜8を数回繰り返す
    10 83MHz
    30dB 前後
    無変調
    83MHz 受信 フロントエンド
    T6
    S メータ = 最大 IF 調整 (フロントエンド)
    11 83MHz
    90dB
    mono 1kHz
    83MHz 受信
    IF BAND : WIDE
    チューナ基板
    T1
    T2
    T3
    T4
    T5
    T7
    T8
    T9
    T10
    T11
    オーディオ出力 = 高調波歪最小 IF 調整 (WIDE)
    12 83MHz 受信
    IF BAND : NARROW
    チューナ基板
    T6
    IF 調整 (NARROW)
    13 83MHz
    69dB (80dBf)
    mono 1kHz
    83MHz 受信
    IF BAND : WIDE
    チューナ基板
    VR3
    S メータ = 4.8 S メータ調整
    14 83MHz
    39dB (50dBf)
    mono 1kHz
    チューナ基板
    VR1
    S メータ = 4
    15 手順13〜14を数回繰り返す
    16 83MHz
    25dB
    mono 1kHz
    83MHz 受信
    MUTING : 1
    チューナ基板
    VR4
    MUTING = ON/OFF 閾 MUTING-1 調整
    17 83MHz
    40dB
    mono 1kHz
    83MHz 受信
    MUTING : 2
    チューナ基板
    VR5
    MUTING-2 調整
    18 83MHz
    90dB
    stereo 1kHz L+R
    83MHz 受信
    FUNCTION : FM AUTO
    MPX 基板
    VR1
    以下の [VCO 調整手順] を参照 VCO 調整
    19 83MHz 受信 MPX 基板
    VR2
    オーディオ出力 = 19kHz 成分最小 パイロットキャンセル調整
    20 チューナ基板
    T3
    T4
    オーディオ出力 = 高調波歪最小 WIDE
    stereo 歪補正
    21 83MHz 受信
    IF BAND : NARROW
    チューナ基板
    T6
    NARROW
    stereo 歪補正
    22 83MHz
    90dB
    stereo 1kHz R/L
    83MHz 受信
    IF BAND : WIDE
    MPX 基板
    VR3
    L/R ch. オーディオ出力 = 最小 WIDE
    セパレーション調整
    23 83MHz 受信
    IF BAND : NARROW
    MPX 基板
    VR4
    NARROW
    セパレーション調整
    24 83MHz
    90dB
    mono 400Hz
    83MHz 受信
    IF BAND : WIDE
    - オーディオ出力 = 記録 REC LEVEL CHECK 調整
    25 REC LEVEL CHECK : ON MPX 基板
    VR5
    オーディオ出力 = 手順26の -6dB

  4. AM 受信部の調整

    手順 SSG出力 TX-8900U の設定 調整箇所 TP 及び調整値 備考
    1 - FUNCTION : AM - -  
    2 455kHz
    80dB
    400Hz
    SSG 出力を
    チューナ基板の TP4 に注入
    チューナ基板
    F8
    オーディオ出力 = 最大 IF 調整
    3 600kHz
    30dB
    400Hz
    600kHz 受信 チューナ基板
    T13
    T14
    バーアンテナ
    トラッキング調整
    4 1400kHz
    30dB
    400Hz
    1400kHz 受信 チューナ基板
    TC1
    TC2
    TC3
    5 手順3〜4を数回繰り返す

  5. 調整結果

    1. FM ステレオセパレーションなどは以下となりました。 良好な数値です。

    2. 高調波歪率はステレオ 1kHz WIDE で 0.022〜0.042% 程度、NARROW で 0.22〜0.24% 程度でした。

      • 仕様よりかなり良いです。 当たりの個体かもしれません。

      • TX-8900U には WIDE が追加されているので、 TX-8900 より1桁良いです。 NARROW では同程度です。

      • TX-8900U は NARROW でも十分使えると言えます。

      項目 IF BAND L R 単位
      ステレオセパレーション WIDE 46 47 dB
      NARROW 46 46 dB
      パイロット信号キャリアリーク - -97 -100 dB
      オーディオ出力レベル偏差 (MONO) - 0 -0.08 dB
      REC LEVEL CHECK 信号 - -4.8 -4.7 dB
      421.9 Hz



使ってみました

  1. 悪くはないデザインですが ・・・

  2. 機能関連

  3. 性能・音質

  4. TX-8900 との比較

    比較項目 TX-8900 優位性 TX-8900U 備考
    デザイン フロントパネル 5mm 厚アルミ、彫刻文字     5mm 厚アルミ、彫刻文字  
    ダイヤル窓の飾りサッシ 光沢あり、マーカなし   光沢なし、マーカがあって邪魔  
    チューニングノブ 光沢あり   光沢なし、粗い筋入り  
    ツマミ 光沢あり   光沢なし、粗い筋入り  
    レバー 光沢あり   光沢なし  
    ダイヤルスケール照明 適度な明るさ   やや暗い (LED 化により改善した)  
    インディケータ照明 適度な明るさ   かなり暗い (LED 化により改善した)  
    ダイヤル板と指針 黒表示だけだが見易い     キンキラの飾りあり どちらも良い
    FM フロントエンド 5連バリコン     5連バリコン 全く同じ
    IF WIDE/NARROW 切換なし   WIDE/NARROW 切換あり  
    SAW フィルタなし   SAW フィルタ使用  
    検波 PBLD     PBLD 全く同じ
    MPX HA1156
    パイロットキャンセル回路なし
      PA1001
    パイロットキャンセル回路あり
     
    S メータ / T メータ HA1137     PA3001 同調点検出を兼ねる
    MUTING Power on-off muting     Power on-off muting 回路は違うが機能的には同じ
    S/N muting     S/N muting
    Detuning muting     Detuning muting
    Signal level muting     Signal level muting
    AM フロントエンド 3連バリコン     3連バリコン  
    HA1138 / RF アンプなし   HA1197 / RF アンプあり  
    FM/AM
    共通
    AF アンプ AF 基板として独立     MPX 基板に集約  
    トランジスタで構成   IC 化され信頼性向上 (PA1002)  
    ±13V デュアル電源駆動   +13V シングル電源駆動  
    REC LEVEL CHECK トランジスタで構成   IC 化され信頼性向上 (HA1452W)  
    電源基板 トランジスタで構成   IC 化され信頼性向上 (PA2002)  
    その他 電源 AC100V 50/60Hz 18W   AC100V 50/60Hz 22W
    (LED 化により 12W に改善した)
     
    外形寸法 420(W)×150(H)×365(D)mm   420(W)×150(H)×392(D)mm 奥行が 27mm 違う
    重量 9.1kg   9.4kg 300g 違う
    発売時期 1975年     1976年 1年違う
    定価 65,000円   65,800円 800円違う



仕様その他

  1. ドキュメント

  2. TX-8900U の輸出型式 TX-9500U のドキュメント

  3. 仕様は以下です。

    FM 受信部
    実用感度 (75Ω) mono 0.85uV/9.8dBf
    S/N 比 50dB 感度 (75Ω) mono 1.4uV/14.0dBf
    stereo 17.5uV/36.1dBf
    S/N 比 mono 82dB
    stereo 77dB
    高調波歪率 WIDE mono 0.05% (100Hz), 0.05% (1kHz), 0.07% (10kHz), 0.12% (15kHz)
    stereo 0.1% (100Hz), 0.07% (1kHz), 0.2% (10kHz), 0.5% (15kHz)
    NARROW mono 0.07% (100Hz), 0.07% (1kHz), 0.1% (10kHz)
    stereo 0.3% (100Hz), 0.25% (1kHz), 0.5% (10kHz)
    キャプチャーレシオ WIDE 0.8dB
    NARROW 2.0dB
    実効選択度 WIDE 35dB (400kHz)
    NARROW 85dB (400kHz), 65dB (300kHz)
    ステレオセパレーション WIDE 50dB (1kHz), 35dB 以上 (50Hz〜15kHz)
    NARROW 45dB (1kHz), 30dB 以上 (50Hz〜15kHz)
    周波数特性 20Hz〜10kHz ±0.2dB
    20Hz〜15kHz +0.2 -0.5dB
    イメージ妨害比 120dB
    IF 妨害比 115dB
    スプリアス妨害比 110dB
    AM 抑圧比 65dB
    キャリアリーク抑圧比 77dB
    ミューティング動作レベル (75Ω) mute-1 2.5uV/19.2dBf
    mute-2 14uV/34.1dBf
    アンテナインピーダンス 75Ω不平衡型 / 300Ω平衡型
    AM 受信部
    実用感度 300uV/m (バーアンテナ)
    15uV
    選択度 30dB
    S/N 比 55dB
    イメージ妨害比 70dB
    IF 妨害比 65dB
    総合
    出力レベル/インピーダンス FM
    100% 変調
    Fixed 650mV/4.2kΩ
    Variable 50mV〜1.3V/3.6kΩ
    AM
    30% 変調
    Fixed 200mV/4.2kΩ
    Variable 15〜400mV/3.6kΩ
    電源電圧 AC100V, 50/60Hz
    定格消費電力 24W
    外形寸法 420(W)×150(H)×392(D)mm
    重量 9.4kg
    その他
    発売時期 1976年
    定価 65,800円