TRIO KT-80 (2号機) が到着
2022年5月27日、広島市の Y さんから
TRIO KT-80
の修理&再調整依頼品が到着しました。
薄型デザインの
FM 専用チューナ
で
パルスカウント検波
です。
この写真は修理&再調整後です。
[POWER] ランプの輝きが赤になっています。
程度&動作チェック
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修理依頼者のコメント
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周波数が 0.5MHz 程度ずれている。
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時折音声が途切れます。
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その時は、シグナルインジケータが消えます。
一緒に [STEREO] [TUNED/LOCK] ランプも消えます。
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しばらく放置しておくと復活し、しばらくは問題なく使用できます。
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[POWER] ランプが切れており、赤色 LED 化してほしい。
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外観
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製造シリアル番号は [00707176] です。
電源コードの製造マーキングより1979年製と判りました。
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フロントパネルは汚れはあるものの良い状態です。
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チューニングノブの状態は良好で、指針の動きはスムーズです。
ただし、ダイヤル面の透明板の内部が曇っています。
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リアパネルの状態は良好です。
RCA 端子にも輝きが残っており、つい最近まで使われていた気がします。
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天板にガムテープの糊と思われる後がありますが、これ以外に問題はなく良い状態です。
底板や脚は良い状態です。
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以上を総合すると [並みの中+] のくらい状態です。
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電源 ON してチェック
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[POWER] ランプが切れています。
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同調周波数ズレが -0.5〜0.7MHz 程度あります。
例えば、80.0MHz の放送が 79.5MHz のところで受信されます。
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正常に FM 受信できました。
[STEREO] ランプも点灯します。
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低い周波数でチューニングノブを回すとゴソゴソ雑音が出ます。
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カバーを開けてチェック
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[チューナ基板] は綺麗です。
特に問題なさそうです。
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[電源基板] の C85 1000uF/25V 電解コンデンサで電解液漏れ跡があります。
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近くのダイオードや抵抗に緑青錆が出ています。
電解液で腐食したと思われます。
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基板のパターンにも腐食が波及しているかもしれません。
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C85 を手で揺すると、依頼者のコメントにある [S メータ] [STEREO] [TUNED/LOCK] が消える現象が再現しました。
リペア
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[POWER] ランプ切れ
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LED 化しました。
修理依頼者の希望で赤色にしました。
高輝度 LED を使いました。
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すでにランプ電源は DC 化されているため、電流制限抵抗 2.2kΩ を LED と直列にして組み込みました。
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LED に流した電流は 2mA とごく僅かです。
これ以上流すと明る過ぎるのです。
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KT-80 でフィラメントランプはここだけなので、これで照明関係はオール LED になりました。
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[電源基板] の C85 を手で揺すると、[S メータ] [STEREO] [TUNED/LOCK] が消える
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C85 電解コンデンサから電解液が漏れ出し、近くの部品が腐食したことが原因です。
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整流用ダイオードの D16 のリードが腐食でボロボロでした。
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こうなると、[電源基板] の電解コンデンサを一斉交換するのがよいです。
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交換した部品は以下の通りです。
写真は交換した部品 (交換前に基板に実装されていた部品) です。
部品番号 |
交換前 |
交換後 |
備考 |
C79 |
1uF/50V |
4.7uF/25V |
予防交換 |
C85 |
1000uF/25V |
1000uF/25V |
故障交換 |
C86 |
100uF/25V |
470uF/25V |
予防交換 |
C88 |
100uF/10V |
100uF/16V |
C89 |
10uF/16V |
10uF/16V |
C90 |
1uF/50V |
4.7uF/25V |
D16 |
W06B (100V/0.75A) |
1N4004 (400V/1A) |
ペアでの交換が必要 |
D17 |
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低い周波数でチューニングノブを回すとゴソゴソ雑音が出る
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原因はバリコン軸で接触不良が発生しているためです。
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バリコン軸受に真鍮の板バネが使われています。
ここに緑青錆が出ると接触不良になります。
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以下のバリコン軸清掃をして直りました。
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バリコン軸受に
エレクトロニッククリーナ
を少量塗布して同調ノブを何度もグルグル回すと、緑青錆が湧き出てきます。
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緑青錆を爪楊枝で丹念に除去します。
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上記の手順1と2を繰り返して緑青錆を完全に除去すると、バリコン軸受の接触不良が直ります。
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最後に錆止めとして
コンタクトグリス
をバリコン軸受けに塗布して完了です。
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ダイヤル面の透明板の内部が曇っている
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フロントパネルを分解して調べましたが、曇りの原因は透明プラスチックの変色でした。
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黄色っぽくなっていますが、これは諦めるしかありません。
再調整
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電圧チェック
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以下のように良好です。
VP |
標準値 |
実測値 |
判定 |
電源基板の J100 |
15V |
14.8V |
〇 |
電源基板の J104 |
-13V |
-19.8V |
〇 |
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調整結果
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KT-80 (1号機)
に記載の手順で再調整しました。
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フロントエンドのトラッキングなど、あちこちでズレがありましたが、再調整で高性能が蘇りました。
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スレテオセパレーションは上位機種と比べるとやや低い数値ですが、特に問題ないです。
項目 |
L |
R |
単位 |
ステレオセパレーション |
44 |
43 |
dB |
パイロット信号キャリアリーク |
-74 |
-72 |
dB |
オーディオ出力レベル偏差 (MONO) |
0 |
+0.25 |
dB |
REC CAL |
398.4 |
Hz |
-6.1 |
-6.1 |
dB |
使ってみました
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薄型でデザインが優れたチューナ
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フロントパネルはかなり分厚いアルミ材のヘアライン仕上げで良好です。
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高さが 78mm とかなり薄いです。
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チューニングノブは直径 38mm の無垢アルミ材で高級感あります。
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ダイヤルの動きは、重過ぎず軽過ぎず、ちょうど良いスムーズさです。
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受信性能&音質
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ダイヤル指針が示す周波数と放送局の周波数がほぼピタリ合います。
バリコンの精度は高いようです。
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感度や妨害波排除能力は良いです。
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パルスカウント検波特有のシャープな音で、高音質です。
優れたチューナです!