Victor T-X7

Victor T-X7 をゲット!

2009年7月16日、 Victor T-X7 の中古を知り合いからいただきました。 オークションでも、なかなか見掛けない珍しい機種です。

アナログチューナーの Victor T-X5 を持っているのですが、これのシンセ版かな?

T-X5 の2年後の発売で、 こちらも PTL 検波 です。



早速、程度&動作チェック

  1. 外観

  2. 入手した状態のまま電源 ON してチェックしました



カバーを開けてみました

  1. 基板の作りは良いです。 写真をクリックすると拡大写真を表示できます。

  2. IC を使用して合理化が図られています。


  3. FM フロントエンドは以下の構成で、4連バリキャップです。 同調部は全て2点トラッキング調整でき、コイルはコア入りなので調整しやすいです。

  4. FM IF 部は以下の構成です。 WIDE/NARROW 切り替えがなく、ごく標準的な構成です。 どちらかと言うと WIDE だけのような構成です。

  5. PTL 検波部

  6. MPX 部は [HA11223W] で構成します。 パイロット信号キャンセラー回路があります。 高価な コアレス LPF を使っています。

  7. AM 部のフロントエンドは2連バリキャップです。 [LA1245] で全てを構成します。 バーアンテナ入力を一旦 FET バッファ受け する高感度設計です。

  8. メモリバックアップは [MCU 基板] 上の C516 (2200uF 6.3V) で行います。

  9. 使用 IC のロット番号より、この T-X7 は1981年製と判明しました。 電源ケーブルの製造マーキングは1980年でした。



修理

  1. 電源部の電解コンデンサで液漏れがあり、周辺部品のリード線が(電解液で)若干サビているものがある

  2. フロントパネルの [PRESET STATIONS] 部分を照らす麦球が切れている

  3. 4個の脚のクッション部が剥がれかかって変形している

  4. 天板を留めるサイド側の4本のネジとリア側の2本のネジにサビがある



調整

写真の FM/AM 標準信号発生器 Panasonic VP-8175A (以下 SSG)、 FM Stereo 信号発生器 MEGURO MSG-2170、 周波数カウンタ ADVANTEST TR5822 を使って調整します。 10年も経つとコイルやトリマはズレます。

  

  1. 電圧チェック

    手順 TP 及び調整値 備考
    1 [X801-E] = 標準値 +30V FL 管用
    実測値 +28.64V
    2 [X802-E] = 標準値 +18V [HA1452W] 用
    実測値 +17.63V
    3 [X803-E] = 標準値 +12V チューナー全般用
    実測値 +12.52V
    4 [X804-E] = 標準値 +5.6V MCU などデジタル用
    実測値 +5.58V

  2. FM 受信部の調整

    手順 SSG周波数 SSG出力 T-X7 の設定 調整箇所 TP 及び調整値 備考
    1 - - SELECTOR : FM
    REC CAL : OFF
    QSC : OFF
    MUTE : OFF
    - -  
    2 - - 76MHz 受信 L104 P504 白側電圧 = 2.9V  
    3 - - 90MHz 受信 TC104 P504 白側電圧 = 21.0V  
    4 - - - - 手順2と3を数回繰り返す VT トラッキング調整
    5 76MHz 30dB
    変調 : MONO 400Hz
    76MHz 受信 L101
    L102
    L103
    TP8 (SIGNAL) 電圧 = 最大  
    6 90MHz 30dB
    変調 : MONO 400Hz
    90MHz 受信 TC101
    TC102
    TC103
    TP8 (SIGNAL) 電圧 = 最大  
    7 - - - - 手順5と6を数回繰り返す RF トラッキング調整
    8 83MHz 30dB
    変調 : MONO 400Hz
    83MHz 受信 T101 TP8 (SIGNAL) 電圧 = 最大 IF 調整
    9 83MHz 90dB
    変調 : MONO 400Hz
    83MHz 受信 L106 TP6〜TP7 (C.METER) 間電圧 = 0V FM 同調点調整

  3. MPX 部の調整

    手順 SSG周波数 SSG出力 T-X7 の設定 調整箇所 TP 及び調整値 備考
    1 - - SELECTOR : FM
    REC CAL : OFF
    QSC : OFF
    MUTE : ON
    - -  
    2 - - - R180
    (VCO ADJ.)
    TP21 (VCO 76kHz) 周波数 = 76kHz±200Hz VCO フリーラン周波数
    周波数カウンタで測定
    3 83MHz 90dB
    Pilot 信号 : ON
    変調 : STEREO 1kHz
    83MHz 受信 T101 オーディオ出力電圧 = 高調波歪率最小 IF 歪調整
    ±90度の範囲で調整
    4 83MHz 90dB
    Pilot 信号 : ON
    変調 : OFF
    83MHz 受信 R184
    (PILOT CANCEL)
    オーディオ出力電圧 = 19kHz 成分最小 パイロットキャンセル調整
    5 83MHz 90dB
    Pilot 信号 : ON
    変調 : R/L ch. only 1kHz
    83MHz 受信 R200
    (SEPA ADJ.)
    L/R ch. オーディオ出力電圧 = 最小 セパレーション調整

  4. AM 受信部の調整

    手順 SSG周波数 SSG出力 T-X7 の設定 調整箇所 TP 及び調整値 備考
    1 - - SELECTOR : AM
    REC CAL : OFF
    MUTE : ON
    - -  
    2 - - 531kHz 受信 L304 P504 白側電圧 = 2.2V  
    3 - - 1602kHz 受信 TC302 P504 白側電圧 = 22.0V  
    4 - - - - 手順2と3を数回繰り返す VT トラッキング調整
    5 603kHz 40dB
    変調 : 400Hz
    603kHz 受信 バーアンテナのレバー C316 右側電圧 = 最大  
    6 1404kHz 40dB
    変調 : 400Hz
    1404kHz 受信 TC301 C316 右側電圧 = 最大  
    7 - - - - 手順5と6を数回繰り返す RF トラッキング調整
    8 999kHz 40dB
    変調 : 400Hz
    999kHz 受信 T301
    T302
    C316 右側電圧 = 最大 IF 調整

  5. 調整結果

    1. FM フロントエンドで若干トラッキングのズレがありました。

    2. FM ステレオセパレーションなどは以下となりました。 問題ない数値です。

      項目 L R 単位
      ステレオセパレーション 53 51 dB
      パイロット信号キャリアリーク -66 -64 dB
      オーディオ出力レベル偏差 (MONO) 0 +0.29 dB
      REC LEVEL CHECK 信号 -7.6
      320.1Hz
      -7.6
      320.1Hz
      dB



使ってみました

  1. 非常にスッキリしたシンプルな薄型デザインです

  2. 機能関連

  3. FM の感度は良く、十分高音質です。 Pioneer F-500 の音に比べて若干華やかさが抑えられている感じがします。 これが PTL 検波の音だと思います。

  4. AM は十分な感度とそれなりの音質です。



S メータ



仕様&その他

  1. ドキュメント

  2. 仕様は以下です。

    FM チューナー部  
    受信周波数範囲 76〜90MHz
    50dB クワイティング感度 (75Ω) mono : 1.5uV/14.8dBf
    stereo :
     QUIETING AUTO : 9.8uV/31.0dBf
     QUIETING OFF : 19uV/36.8dBf
    実用感度 (75Ω) 0.85uV/9.8dBf
    S/N 比 mono : 83dB
    stereo : 78dB
    全高調波歪率 mono : 0.05% (100Hz, 1kHz, 6kHz)
    stereo 0.08% (100Hz, 1kHz), 0.15% (6kHz)
    IM 歪率 mono : 0.05%
    stereo 0.08%
    キャプチャーレシオ (IHF) 1.0dB
    実効選択度 (IHF) 80dB
    イメージ妨害比 (IHF) 80dB
    IF 妨害比 (IHF) 110dB
    スプリアス妨害比 (IHF) 105dB
    AM 抑圧比 (IHF) 65dB
    ステレオセパレーション 55dB (1kHz)
    周波数特性 30Hz〜15kHz +0.3, -0.8dB
    サブキャリア抑圧比 68dB
    ミューティングスレシホールドレベル 4.4uV/24.1dBf
    QUITETING AUTO 動作レベル 60uV/48.6dBf
    アンテナ入力インピーダンス 75Ω不平衡
    300Ω平衡
    AM チューナー部  
    受信周波数範囲 531〜1602kHz
    実用感度 バーアンテナ: 200uV/m
    外部アンテナ: 35uV
    全高調波歪率 0.3%
    S/N 比 50dB
    選択度 40dB
    IF 妨害比 40dB
    イメージ妨害比 60dB
    スプリアス妨害比 (IHF) 45dB
    総合  
    出力レベル/インピーダンス 600mV/2.2kΩ
    電源電圧 AC100V, 50/60Hz
    定格消費電力(電気用品取締法) 9.5W
    外形寸法 450(W)×79(H)×345(D)mm
    重量 4.1kg
    その他  
    発売時期 1981年
    定価 54,800円