SONY ST-AV900

SONY ST-AV900 が到着

2009年4月17日、 SONY ST-AV900 故障品が送られてきました。

普段は修理を固くお断りしているのですが、この依頼者より SONY ST-SA5ES (2号機) の寄贈を受けたので、お礼代わりに特別に受け付けました。

  1. 外観は中古としては並程度

  2. FM の動作状況

  3. AM の動作状況

  4. TV の動作状況



カバーを開けてみました

  1. 内部の作りはクラシカルな感じがします。 写真をクリックすると拡大写真を表示できます。

  2. FM 受信部

  3. AM 受信部

  4. TV 受信部

  5. PLL 部は SONY CXA7025B を使ったダレクトコンパレータ方式です。

  6. ST-AV900 全体のコントロールは MPU の SONY TMP47C670N が行います。

  7. 使用 IC のロット番号より、この ST-AV900 は1988年製と判明しました。 電源ケーブルの製造マーキングも1988年でした。



修理

  1. FM の不具合状況より「クォードラチュア検波部の故障」と見立てました

    1. クォードラチュア検波は SANYO LA1265 とディスクリ IFT の T301, T302 で構成します。

    2. T301 を調整しましたが、NULL 電圧を 0V に調整し切れません。

    3. LA1265 の 5, 6, 7pin 辺りに手を触れると正常受信できることがあります。

    4. こうなると間違いなくディスクリ IFT の容量抜け=故障 です。

      • 交換部品が必要になる訳ですが、これは部品取り用として保管していた KENWOOD KT-747 基板から抜き取ることにします。 右の写真が ST-AV900 に付いていた部品です。 左から T301, T302 です。

      • たぶん故障しているのは T301 ですが、T301 + T302 のペアで交換する必要があるので一斉交換しました。

    5. 直りました! チャン↓チャン↑

  2. 次項の「調整」にて全体に再調整して全て良好になりました。



調整

写真の FM/AM 標準信号発生器 Panasonic VP-8175A (以下 SSG)、 FM Stereo 信号発生器 MEGURO MSG-2170、 周波数カウンタ ADVANTEST TR5822 を使って調整します。 10年も経つとコイルやトリマはズレます。

  

  1. FM 同調点の調整

    手順 SSG周波数 SSG出力 ST-AV900 の設定 調整箇所 TP 及び調整値 備考
    1 - - BAND : FM
    ST/MONO : MONO
    - -  
    2 83MHz 変調 : OFF
    出力 : 90dB
    83MHz 受信 T301 NULL ピン電圧 = 0V ±10mV なら良い

  2. FM フロントエンドの調整

    手順 SSG周波数 SSG出力 ST-AV900 の設定 調整箇所 TP 及び調整値 備考
    1 - - BAND : FM
    ST/MONO : MONO
    - -  
    2 - - 90MHz 受信 フロントエンド内
    OSC コイル
    R230 左側電圧 = 7.4V VT high
    3 - - 76MHz 受信 - R230 左側電圧 = 1.9V VT low (確認のみ)
    4 83MHz 変調 : OFF
    出力 : 30dB
    83MHz 受信 フロントエンド内
    RF コイル×2
    LA1265 13pin 電圧 = 最大  
    5 83MHz 変調 : OFF
    出力 : 30dB
    83MHz 受信 フロントエンド内
    IFT
    LA1265 13pin 電圧 = 最大 フロントエンド内 IF 調整

  3. FM クォードラチュア検波部の調整

    手順 SSG周波数 SSG出力 ST-AV900 の設定 調整箇所 TP 及び調整値 備考
    1 - - BAND : FM
    ST/MONO : MONO
    - -  
    2 83MHz Pilot 信号 : OFF
    変調 : 1kHz 100%
    出力 : 90dB
    83MHz 受信 T302 オーディオ出力 = 高調波歪最小 WaveSpectraで観測
    3 83MHz 変調 : OFF
    出力 : 90dB
    83MHz 受信 T301 NULL ピン電圧 = 0V ±10mV なら良い
    4 - - - - 手順2と3を数回繰り返す  

  4. FM MPX 部の調整

    手順 SSG周波数 SSG出力 ST-AV900 の設定 調整箇所 TP 及び調整値 備考
    1 - - BAND : FM
    ST/MONO : AUTO
    - -  
    2 83MHz Pilot 信号 : ON
    変調 : R/L only, 1kHz 100%
    出力 : 90dB
    83MHz 受信 VR301 L/R ch. オーディオ出力 = 最小 セパレーション調整
    WaveSpectraで観測

  5. AM 部の調整

    手順 SSG周波数 SSG出力 ST-AV900 の設定 調整箇所 TP 及び調整値 備考
    1 - - BAND : AM - -  
    2 - - 1602kHz 受信 CP201 黒コア R230 左側電圧 = 7.5V VT high
    3 - - 531kHz 受信 - R230 左側電圧 = 1.0V VT low (確認のみ)
    4 1071kHz 変調 : OFF
    出力 : 30dB
    1071kHz 受信 CP201 赤コア LA1265 13pin 電圧 = 最大 RF 調整
    5 1071kHz 変調 : OFF
    出力 : 30dB
    1071kHz 受信 T303 LA1265 13pin 電圧 = 最大 IF 調整

  6. 再調整結果は以下です。 特に問題なく良好です。

    項目 L R 単位
    ステレオセパレーション 54 55 dB
    パイロット信号キャリアリーク -59 -60 dB
    オーディオ出力レベル偏差 (MONO) 0 +0.07 dB



使ってみました

  1. 全体的に優れたデザインです

  2. FM 受信

  3. AM 受信

  4. TV 受信

  5. FM チューナー機能がメインと思いますが、TV チューナー機能も優れています。 2011年にアナログテレビ放送が終了するのが残念です。



仕様