SONY ST-S333ESX (6号機) が到着!
2023年4月23日、千葉県船橋市の I さんより
SONY ST-S333ESX
の修理依頼品が到着しました。
ST-S333ESX は好みの機種です。
程度&動作チェック
-
修理依頼者からのコメント
-
数年前にオークションで入手しました。
-
外観はきれいで FL 管表示も明るいです。
メモリバックアップも問題なく出来ています。
-
動作も問題なく動作しています。
音も Pioneer F-500 と優越つけがたいくらいです。
-
ただ、時報や女性アナウンサーの語尾にひずみ感があり、古いものなので調整が必要なのかな?と思います。
-
アンテナは CATV 共聴での受信です。
F-500 でも良好に受信しています。
-
AM も受信できています。
純正アンテナもあります。
-
外観
-
製造シリアル番号は [207518] で、電源コードの製造マーキングより [1987年製造品] とわかりました。
-
純正 AM ループアンテナが添付されていました。
-
フロントパネルには僅かな線キズはありますが、かなり綺麗です。
輝きがあります。
-
リアパネルは綺麗です。
RCA 端子に輝きが残っています。
-
天板には僅かのヘコミと右奥に塗装の変色がありますが、輝きがあります。
-
左側板は綺麗です。
右側板に僅かなキズはありますが綺麗です。
-
底板に白っぽいサビがありますが、問題はないです。
-
電源 ON してチェック
-
電源は正常に入り、FL 表示器の輝度は新品同様です。
ボタン操作に問題はなく良好です。
-
FM は問題なく受信でき、ステレオになります。
オートチューニングで正しい周波数を示します。
-
到着時のまま、FM 特性の一部を測定しました。
ステレオセパレーションの落ち込みはありますが、実用範囲です。
項目 |
IF BAND |
stereo/mono |
L |
R |
単位 |
ステレオセパレーション (1kHz) |
WIDE |
stereo |
40 |
39 |
dB |
NARROW |
36 |
38 |
dB |
高調波歪率 (1kHz) |
WIDE |
mono |
0.020 |
% |
stereo |
0.040 |
% |
NARROW |
mono |
0.42 |
% |
stereo |
0.42 |
% |
パイロット信号キャリアリーク |
WIDE |
stereo |
-58 |
-75 |
dB |
-
AM は問題なく良好に受信できます。
-
カバーを開けてチェック
-
基板には僅かに煤のようなゴミが堆積していますが、綺麗です。
-
C907 (1000uF/35V) が少し膨張して被覆が剥けています。
-
C604 (10uF/16V)、C613 (10uF/16V) の2個のタンタルコンデンサが使われています。
-
タンタルコンデンサは信頼性に不安があり、ある日突然短絡障害を引き起こします。
リペア
-
障害予防のための部品交換
-
交換部品リスト
部品番号 |
交換前 |
交換後 |
備考 |
C604 |
10uF/16V (タンタル) |
10uF/50V (FG) |
オーディオクラスに交換 |
C613 |
10uF/16V (タンタル) |
10uF/50V (FG) |
C907 |
1000uF/35V (85℃) |
1000uF/35V (105℃) |
105℃クラスに交換 |
-
交換前後の部品の写真
-
左の写真は [C604] [C613] です。
青色のタンタルコンデンサを金色のオーディオクラス電解コンデンサに交換します。
-
右の写真は [C907] です。
大きいのを小さいのに交換後します。
-
二周りくらい小さくなって風通しが良くなるのと、105℃クラスになるので信頼性が上がります。
-
[C907] を取り外してみたら少し液漏れして基板が汚れていました。
交換必須だったようです。
-
液漏れ跡は交換前に無水アルコールで清掃しました。
-
交換後に正常動作することを確認しました。
-
電解コンデンサは熱に弱いので、[C907] は放熱板からできるだけ離すべく、やや斜めに取り付けました。
-
RCA 端子のリードで半田クラック気味
-
基板には僅かに煤のようなゴミが堆積している
-
刷毛とブロアで軽く基板ほかを清掃しました。
-
基板には部品が実装されているので完全には清掃しきれませんが、少しマシになりました。
再調整
-
電圧チェック (VP)
-
電圧の実測値は以下のように正常でした。
VP |
標準値 |
実測値 |
備考 |
JW174 |
+15V |
+16.1V |
チューナ用 |
JW122 |
+15V |
+15.5V |
FL 管用 |
JW169 |
+5.6V |
+5.50V |
デジタル用 (MCU) |
JW92 |
+30V |
+30.7V |
VT 電圧用 |
D907-A |
-6V |
-5.62V |
コントロール用 |
-
FM/AM 受信部の調整
-
調整結果
-
高周波系はそれほどズレはありませんでした。
ですから、歪の原因はマルチパスの可能性が高いです。
-
マルチパスは CATV に元々入っているか、CATV 壁コンセント〜チューナまでの配線に問題がある場合にも発生します。
-
マルチパスがあるかどうかは、時報を聴いて歪を感じるようなら発生しています。
-
ステレオセパレーションなどは以下のように素晴らしい数値になりました。
項目 |
IF BAND |
stereo/mono |
L |
R |
単位 |
ステレオセパレーション (1kHz) |
WIDE |
stereo |
70 |
70 |
dB |
NARROW |
39 |
40 |
dB |
高調波歪率 (1kHz) |
WIDE |
mono |
0.016 |
% |
stereo |
0.037 |
% |
NARROW |
mono |
0.33 |
% |
stereo |
0.33 |
% |
パイロット信号キャリアリーク |
WIDE |
stereo |
-79 |
-80 |
dB |
オーディオ出力レベル偏差 |
WIDE |
mono |
0 |
0 |
dB |
CAL TONE |
WIDE |
mono |
445.3 |
Hz |
-6.0 |
dB |
-
AM は再調整で少し感度が上がりました。
使ってみました
-
パネルやボタンなどの機構部は贅沢な作りで、高級感があります。
-
シンセサイザ機では不要と思う同調ノブがなく、スッキリしたデザインです。
-
FM は、感度・S/N・解像度とも良く、細かい音がよく聴こえます。
-
AM は、感度が良く、音も (AM としては) 良いです。