SONY ST-S333ESX (2号機) をゲット!
2020年8月13日、私のチューナページのファンである東京府中の I さんから
SONY ST-S333ESX
の故障品をいただきました。
無料ですが、送料 1,510円 を私のほうで負担しました。
故障状態は
突然、FM 受信周波数が 87.5〜108.0MHz になって受信できなくなった
とのこと。
非常に珍しい故障で興味深々、修理してみたい!
到着後、程度&動作チェック
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外観
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全体的には並みの中古状態です。
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フロントパネルにあるディスプレイの透明アクリル板に線キズがあります。
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リアパネル自体は綺麗ですが、ここにある端子に薄いサビが出ています。
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天板にヘコミ等はありませんが、若干の粘着性の汚れがあります。
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左側サイドウッドは綺麗ですが、下側の端に2箇所の僅かなハゲがあります。
放置しても問題ない程度です。
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右側サイドウッドの下側の端に5箇所の小さなハゲがあり、前面に近い位置に 1×2cm 程度のシールの剥がし痕とこの時にできたと思われる大きいハゲがあります。
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入手した状態のまま電源 ON してチェックしました
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電源は正常に入り、FL 表示器の輝度は新品同様です。
ボタンやスイッチの操作は問題なくできます。
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FM 受信周波数が 87.5〜108.0MHz と輸出版の周波数になっています。
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思わず、リアパネルの型式シールを見てみましたが、FM 76〜90MHz と書いてあるので、日本版に間違いないです。
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受信周波数表示は 87.5〜108.0MHz となっていますが、実際の FM 受信では何も受信できません。
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VT 電圧を測定してみたら、どの受信周波数でも 28.4V でした。
これでは受信できるはずがありません。
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正常であれば VT 電圧は、[低い周波数受信〜高い周波数受信] で [8〜20V] 程度になります。
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PLL 回路は OSC 周波数を 98.2MHz 以上に上げようと VT 電圧を上げるのですが、同調回路が日本バンドのままなので追随できません。
VT 電圧を最高の 28.4V にしてギブアップするのです。
以下の表は参考です。
地域 |
受信周波数 |
OSC 周波数 |
中間周波数 |
エンファシス |
日本 |
76.0〜90.0MHz |
65.3〜79.3MHz |
10.7MHz |
50us |
西ヨーロッパ |
87.5〜108.0MHz |
98.2〜118.7MHz |
アメリカ |
88.0〜108.0MHz |
98.7〜118.7MHz |
75us |
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[PRESET] ボタンの 1〜8 は問題なくプリセット/コールできますが、9〜10 は全く反応しません。
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[SCAN] ボタンでプリセットスキャンしてみると、1〜8 の間しか動かず、やはり、9〜10 は使えません。
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以上より、MCU 動作プログラムがテストモード等に切り替わってしまったようです。
こうなった原因はわかりませんが ・・・
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AM は問題なく良好に受信できます。
リペア
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FM 受信周波数が 87.5〜108.0MHz と輸出版の周波数になっている
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この状態で各部の動作状態をチェックしましたが問題無く、部品の故障ではなさそうです。
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こうなると、MCU を完全にリセットしたら直るかもです。
やってみないとわかりません。
成功率は 50% くらいか?
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MCU は IC601 TMP47C40-6308
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プリセットメモリ (RAM) はこの MCU に内蔵されています。
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本体電源 OFF にしても RAM データが消えないよう、MCU の電源を C601 33mF/5.5V でバックアップしています。
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すなわち、本体電源 OFF にしても C601 で2週間〜1ヵ月は MCU は動き放しです。
HOLD モードですが
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MCU を完全にリセットするには、C601 をディスチャージする必要があります。
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C601 をディスチャージ
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C601 のコンデンサをディスチャージすれはよいのですが、容量が大きいので、直接短絡するのは危険です。
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47Ωの抵抗が直列に入っている C613 10uF/16V タンタルコンデンサの両端でディスチャージするのがよいです。
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本体電源を OFF とします。
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C613 の両端をリード線で短絡してディスチャージします。
このまま1分間待ちます。
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短絡に使ったリード線を忘れずに取り外します。
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C601 ディスチャージ後、本体電源 ON してみる
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見事!
FM 受信周波数が 76.0〜90.0MHz の日本バンドに戻って正常になりました!!!
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[PRESET] ボタンの 9〜10 が反応するようになって、全てのボタンで正常に Save/Call できます。
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キズや汚れ清掃
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ディスプレイの透明アクリル板の線キズ ・・・ 無水アルコールと綿棒で拭き取ったら消滅しました。キズではなくて汚れでした。
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リアパネルにある端子の薄いサビ ・・・ RCA 端子はティッシュで擦るとピカピカになりました。
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天板にある若干の粘着性汚れ ・・・ ガムテープ跡と思われ、無水アルコールと OA クリーナで綺麗になりました。
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左側サイドウッドの僅かなハゲ ・・・ 補修塗りとワックス塗布でほぼ完全に直りました。
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右側サイドウッドの小さなハゲとシールの剥がし痕 ・・・ 無水アルコールで清掃後、補修塗りとワックス塗布で目立たなくなりました。
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内部に若干たまっていたゴミはブラシとエアダスターで綺麗になりました。
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全体を OA クリーナで清掃しました。
調整
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ST-S333ESX (1号機)
に記載の手順で再調整しました。
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調整結果
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FM ステレオセパレーションなどは以下となりました。
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この個体の測定結果は
超優秀
です。
当り!ですね。
項目 |
IF BAND |
L |
R |
単位 |
ステレオセパレーション |
WIDE |
70 |
70 |
dB |
ステレオセパレーション |
NARROW |
30 |
30 |
dB |
パイロット信号キャリアリーク |
- |
-74 |
-67 |
dB |
オーディオ出力レベル偏差 (MONO) |
- |
0 |
0 |
dB |
CAL TONE |
- |
-8.94
386.7 |
-8.89
386.7 |
dB
Hz |
使ってみました
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パネルやボタンなどの機構部はバブル期 (1985〜1991年) を反映した贅沢な作りになっており、
超貴重品!
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電源ケーブルの製造マーキングは1986年で、内部の IC も1986年製でした。
よって、この ST-S333ESX は1986年製で間違いないです。
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FM は、感度・S/N・解像度とも良く、細かい音がよく聴こえます。
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AM も、感度が良く、音も良いです。
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プリセットで [FM/AM] [受信周波数] だけでなく [IF-BAND] [MUTING/MODE] も記憶してくれます。
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現在のチューナでは失われた、高級感あふれる贅沢で素性の良いチューナです。
超お奨め!!!