SONY ST-S333ESJ (3号機) が到着
2023年1月20日、川崎市の Y さんより
SONY ST-S333ESJ
の修理依頼品が到着しました。
程度&動作チェック
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修理依頼者のコメント
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感度がいまいちで受信が安定しない感じ(同調点のズレあり)です。
音はまぁまぁ出ています。
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外観
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製造シリアル番号は [200181] で、電源コードの製造マーキングより [1993年製造品] とわかりました。
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純正 AM ループアンテナの添付はありませんでした。
側板は付いていませんでした。
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非常に綺麗でキズやスレはありませんが、フロントパネルの文字がかすれているのが残念です。
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おそらく、アルコールか中性以外クリーナでクリーニングしたのだと思います。
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リアパネルは綺麗で、端子類にも輝きが残っています。
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天板を左右から留めるネジが純正ではないです。
別に問題はありません。
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電源 ON してチェック
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問題なく電源が入り、FL の輝度は新品同様、各ボタン操作も正常です。
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FM 受信
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TOKYO FM 80.0MHz → 79.9MHz で受信し、-0.1MHzの周波数ズレがあります。
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周波数ズレはありますが、ちゃんと音が出て [STEREO] 表示も出ます。
感度はそう悪い感じはしません。
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AM 受信
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純正 AM ループアンテナが添付されなかったので、手持ちの純正でないループアンテナでチェックしました。
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問題なく良好に受信できました。
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カバーを開けてチェック
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少し綿埃が溜まっています。
基板自体は綺麗で、目視では部品は問題ないように思います。
リペア
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基板の上に少し綿埃が溜まっている
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FUSE 抵抗のチェック
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2本が標準値より大きく外れていましたが、動作に支障はなく、交換はしていません。
回路 |
部品番号 |
標準値 (Ω) |
実測値 (Ω) |
判定 |
備考 |
FM FRONT END |
R119 |
100 |
85.1 |
〇 |
|
WOIS |
R203 |
10 |
10.3 |
〇 |
|
R207 |
10 |
10.4 |
〇 |
|
R211 |
10 |
10.6 |
〇 |
|
R227 |
10 |
10.5 |
〇 |
|
IF |
R259 |
100 |
99.2 |
〇 |
|
DET |
R274 |
10 |
10.4 |
〇 |
|
R279 |
220 |
157 |
△ |
動作に支障はない |
R292 |
100 |
99.8 |
〇 |
|
MPX |
R301 |
10 |
10.6 |
〇 |
|
R327 |
47 |
49.0 |
〇 |
|
AM |
R403 |
220 |
221 |
〇 |
|
R410 |
150 |
151 |
〇 |
|
PLL |
R511 |
220 |
221 |
〇 |
|
R516 |
180 |
179 |
〇 |
|
CONTROL |
R626 |
47 |
47.6 |
〇 |
|
POWER SUPPLY |
R910 |
22 |
22.2 |
〇 |
|
R921 |
220 |
220 |
〇 |
|
R931 |
220 |
268 |
△ |
動作に支障はない |
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感度がイマイチ (修理依頼者より)
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RF トラッキング調整してみたところ、[CT102] トリマコンデンサが劣化しているのがわかりました。
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回していると、ストーンと調整値が大きく落ち込みます。
おそらくハトメ部の接触不良と思います。
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しばらく電源を入れたまま放置していたら、S メータが完全にゼロになりました。
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この時にトリマコンデンサを回してみたら直りました。
やはり、トリマコンデンサが故障しています。
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到着時に特に感度低下を感じなかったのは、輸送時の振動などでたまたま直っていたのでしょう。
辻褄が合います。
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思っていたより
重症
のようです。
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RF 段トリマコンデンサは3個ありますが、全数交換しました。
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右の写真は新しく実装したトリマコンデンサです。
セラミック型です。
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取付はホット側を同調に、コールド側を GND にします。
写真の手前がコールド側です。
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-0.1MHz の周波数ズレがある
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同調点電圧 (R256の両端) を測定すると 1.4V 以上 (正常値は 0±20mV) となっています。
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同調点ズレしています。
[IFT251] を再調整して直りました。
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電気二重層コンデンサ交換
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プリセットメモリのバックアップ用電気二重層コンデンサを交換しました。
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製造から30年経過 (2023年時点) しているので、交換時期です。
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[C605] 0.1F/5.5V → 1F/5.5V と交換しました。
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右の写真は新しく実装した縦型の電気二重層コンデンサです。
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サイズが大きいので縦型でないと基板に乗らないです。
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0.1F → 1F と10倍の容量になったので、10倍の10ヶ月メモリ保持できるかも?
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ハンダクラック対策
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ST-S333ES シリーズでは銅製のアースバーが敷かれています。
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これはこれで素晴らしいのですが、経年変化でアースバーでハンダクラックが発生しやすいのです。
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アースバーの全てに補修ハンダを行いました。
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リアパネルの端子類
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どうしても端子のリードと基板の間で機械的なタワミを原因とするハンダクラックが発生しやすいのです。
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目視で、オーディオ出力 RCA 端子がハンダクラックしていました。
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全ての端子のリードと基板のハンダ付け部分に補修ハンダを行いました。
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交換前に基板に実装されていた部品の記録
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左から [トリマコンデンサ×3個] [電気二重層コンデンサ 0.1F/5.5V] です。
再調整
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電源電圧チェック
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特に問題なく良好です。
ジャンパー |
表示電圧 |
標準電圧 |
実測電圧 |
判定 |
備考 (用途) |
JW88 |
+30V |
+30.9V |
+29.4V |
〇 |
PLL (同調) |
JW89 |
+15V |
+16.3V |
+15.1V |
〇 |
AUDIO SYSTEM |
JW145 |
-17V |
-17.5V |
-17.1V |
〇 |
FL 管 |
JW213 |
+13V |
+13.6V |
+13.1V |
〇 |
DIGITAL SYSTEM |
JW220 |
+5V |
+5.6V |
+5.63V |
〇 |
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調整
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ST-S333ESJ (1号機)
に記載の調整手順にて再調整しました。
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[周波数ズレ] [感度低下] はこの再調整で直りました。
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再調整後は特に問題はなく、良い数値です。
項目 |
IF BAND |
stereo/mono |
L |
R |
単位 |
ステレオセパレーション (1kHz) |
WIDE |
stereo |
61 |
66 |
dB |
NARROW |
44 |
42 |
dB |
高調波歪率 (1kHz) |
WIDE |
mono |
0.008 |
% |
stereo |
0.018 |
% |
NARROW |
mono |
0.2 |
% |
stereo |
0.9 |
% |
パイロット信号キャリアリーク |
WIDE |
stereo |
-70 |
-78 |
dB |
オーディオ出力レベル偏差 |
WIDE |
mono |
0 |
0 |
dB |
CAL TONE 信号 |
WIDE |
mono |
398.4 |
Hz |
-4.9 |
-4.9 |
dB |
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AM の調整は、ループアンテナの添付がなかったので、IF 部のみ調整しました。
使ってみました
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全体的に黒基調のデザイン
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SONY デザインそのものです。
恰好イイです。
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フロントパネルはアルミ材で、ヘアライン仕上げです。
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FM 受信
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感度も S/N も一級品です。
微弱電波もしっかり捉えます。
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解像度がある素晴らしい音。
現代の安物チューナーとは全く異次元の音です。
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AM 受信
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感度は良いです。
ループアンテナでしっかり入感します。