KENWOOD KT-1010Ⅱ

KENWOOD KT-1010Ⅱ

KENWOOD KT-1010Ⅱ をゲット！

2008年9月11日、私のチューナーページのファンから KENWOOD KT-1010Ⅱ の寄贈を受けました。

TRiO KT-1010 と外観は全く同じですが・・・その真実は！

外観＆動作チェック

外観
- ボロボロです。写真のように、アンテナ端子がつぶれており、電源ケーブルは根元でチョン切られています。
- フロントパネルの端に僅かな黒メッキハゲがあります。天板カバーはビニコート鉄板で、かなりのキズがあります。
電源 ON してチェック
- アンテナと電源ケーブルを仮付けしたら、問題なく電源 ON できて良好に動作しました。
- 蛍光表示管の表示は良好で、ランプ切れはありませんでした。
- 操作ボタンに不良はありませんでしたが、動作がかなり重いです。
- 音や感度はあまり問題ないようです。

カバーを開けてみました

TRiO KT-1010 と全く同じです。何が「Ⅱ」なのでしょう？写真をクリックすると拡大写真を表示できます。
- メイン基板をじっくり比較すると、ほんの少し部品配置が違います。
- 例えば、FM フロントエンドの第2 RF トリマの位置が違いますマイナーチェンジの範囲でしょう。
- 以上より、構成説明は TRiO KT-1010 のページを参照ください。
使っている部品のロット番号より、本機は [1984年製造品] とわかりました。
- 1984年というと、ブランドが TRiO から KENWOOD に切り換わった年でもあります。
- 1983年に TRiO KT-1010 が発売され、1984年に本機の KENWOOD KT-1010Ⅱが発売されています。

リペア

アンテナ端子がつぶれており、電源ケーブルは根元で切られている
- 手元の予備品パーツを探してみると、KENWOOD 純正のアンテナ端子と電源ケーブルがあったので、交換しました。
- 写真は、アンテナ端子と電源ケーブル交換後です。普通には交換したとは判らないと思います。
フロントパネルにメッキハゲがある
- 黒のタッチペンで補修塗りしてマシになりました。
操作ボタンの動作がやや重い
- フロントパネルを分解して僅かにオイルアップして直りました。

調整

写真の FM/AM 標準信号発生器 Panasonic VP-8175A (以下 SSG)、 FM Stereo 信号発生器 MEGURO MSG-2170、周波数カウンタ ADVANTEST TR5822 を使って調整します。 10年も経つとコイルやトリマはズレます。

FM 受信部の調整

手順	SSG出力	KT-1010Ⅱの設定	調整箇所	TP 及び調整値	備考
1	-	BAND : FM FM IF BAND : WIDE TUNING MODE : MANU	-	-
2	83MHz 90dB 無変調	83MHz 受信	L11	TP1～TP2 間電圧 = 0±20mV	同調点調整
3	-	76MHz 受信	L7	TP8～TP9 間電圧 = 3.0±0.1V	OSC トラッキング調整
4	-	90MHz 受信	TC5	TP8～TP9 間電圧 = 25.0±0.1V
5	手順3～4を数回繰り返す
6	76MHz 30dB 無変調	76MHz 受信	L1 L2 L3 L6	R50 右電圧 = 最大	RF トラッキング調整
7	90MHz 30dB 無変調	90MHz 受信	TC1 TC2 TC3 TC4	R50 右電圧 = 最大
8	手順6～7を数回繰り返す
9	83MHz 30dB 無変調	83MHz 受信	L5 L8	R50 右電圧 = 最大	IF 調整
10	83MHz 40dB 無変調	83MHz 受信 FM IF BAND : NARROW	-	R50 右電圧 = 測定	WIDE GAIN 調整
11	83MHz 40dB 無変調	83MHz 受信 FM IF BAND : WIDE	VR1	R50 右電圧 = 手順10と同じ	WIDE GAIN 調整
12	83MHz 90dB 無変調		L12	D8 左側波形 = 最大オシロスコープで観測	PLL 検波調整
13	83MHz 90dB 無変調		L13	TP3～TP4 間電圧 = 0±20mV	PLL 検波調整
14	83MHz 90dB mono 1kHz		VR8 VR9	オーディオ出力 = 高調波歪最小	WIDE mono 歪補正
15	83MHz 90dB mono 1kHz	83MHz 受信 FM IF BAND : NARROW	VR10	オーディオ出力 = 高調波歪最小	NARROW mono 歪補正
16	83MHz 90dB stereo 1kHz L+R	83MHz 受信 TUNING MODE : AUTO FM IF BAND : WIDE	VR3	以下の [VCO 調整手順] を参照	VCO 調整
17	83MHz 90dB stereo 1kHz L+R		VR4 L21	オーディオ出力 = 19kHz 成分最小	PILOT CANCELL 調整
18	83MHz 90dB stereo 1kHz L		VR11	L ch. オーディオ出力 = 高調波歪最小	WIDE stereo 歪補正
19	83MHz 90dB stereo 1kHz L	83MHz 受信 FM IF BAND : NARROW	VR12	L ch. オーディオ出力 = 高調波歪最小	NARROW stereo 歪補正
20	83MHz 90dB stereo 1kHz R	83MHz 受信 FM IF BAND : WIDE	VR5	L ch. オーディオ出力 = 最小	WIDE セパレーション調整
21	83MHz 90dB stereo 1kHz L	83MHz 受信 FM IF BAND : WIDE	VR7	R ch. オーディオ出力 = 最小	WIDE セパレーション調整
22	83MHz 90dB stereo 1kHz R/L	83MHz 受信 FM IF BAND : NARROW	VR6	L/R ch. オーディオ出力 = 最小	NARROW セパレーション調整
23	83MHz 25dB mono 1kHz	83MHz 受信 FM IF BAND : WIDE	VR2	MUTING = ON/OFF 閾	MUTING LEVEL 調整

VCO 調整手順

手順	備考
1	VR3 を反時計方向に回し切る
2	VR3 を徐々に時計方向に回し、ディスプレイの [STEREO] 表示が点灯した位置を記録する
3	VR3 を時計方向に回し切る
4	VR3 を徐々に反時計方向に回し、ディスプレイの [STEREO] 表示が点灯する位置を記録する
5	VR3 を [手順2] と [手順4] の中間に設定する

AM 受信部の調整

純正ループアンテナを接続した状態で行うこと

手順	SSG出力	KT-1010Ⅱの設定	調整箇所	TP 及び調整値	備考
1	-	BAND : AM AM IF BAND : WIDE TUNING MODE : MANU	-	-
2	-	522kHz 受信	L19	TP8～TP9 間電圧 = 2.5±0.1V	OSC トラッキング調整
3	-	1629kHz 受信	TC7	TP8～TP9 間電圧 = 20.0±0.1V
4	手順2～3を数回繰り返す
5	603kHz 40dB 無変調	603kHz 受信	L18	S メータ = 最大	RF トラッキング調整
6	1404kHz 40dB 無変調	1404kz 受信	TC6	S メータ = 最大
7	手順5～6を数回繰り返す
8	999kHz 40dB 無変調	999kHz 受信	L20	シグナルレベルメータ = 最大	IF 調整

調整結果

特に FM フロントエンドと PLL 検波部が大きく調整ズレしていました。再調整にて感度と音質が大幅に向上しました。
FM ステレオセパレーションとキャリアリークは以下となりました。
ステレオセパレーションは、WIDE で 70dB 超えと素晴らしい値です。キャリアリークも大きく抑えられています。

個体差もありますが、本機のこの値は 堂々の名器 入りです。

項目	IF BAND	L	R	単位
ステレオセパレーション	WIDE	71	74	dB
ステレオセパレーション	NARROW	66	62	dB
パイロット信号キャリアリーク	-	-71	-79	dB
オーディオ出力レベル偏差 (MONO)	WIDE	0	+0.1	dB

使ってみました

デザイン
- 高さが低くスリム感があります。このスリム感はイイです。
- サイズは KT-1010 や KT-1010F と全く同じです。
- フロントパネルにヘアラインアルミ材を使用しており、質感は高いです。
- 残念なことに、操作ボタンは質感が感じられないプラスチック製です。
- アクリルパネルはイルミネーションされていてアナログチューナーみたいです。
- 部屋の明かりを消すと、パネルの文字がボーと浮き上がり、とてもイイです。癒し系チューナーです。
- ステーションメモリは FM 8局＋AM 8局あります。
性能と音質
- FM 感度は高く、妨害波排除能力も十分あります。
- FM の音質は、歪感が少なく、輪郭ハッキリ、スッキリした音の出かたです。
- 低域から高域までよく出ています。ステレオ分離度は良く、高音質です。
- AM の感度はかなり良く、ボリュームを WIDE 側にした時の音質は結構イイです。
満足度の高いチューナ
- やはり、セパレーションが 70dB 以上あるので、音質は抜群に良いです。
- 私のところに転がり込んできた時はボロボロだったのが、大変身です！！！

レベルメータ

FM アンテナ入力レベルとレベルメータの振れの相関関係を測定してみました。 1～7 とあるのはレベル表示、×が消灯、○は点灯です。

これを見ると、S/N 良く受信するためには、フルレベルの必要があるようです。

アンテナ入力 (dB)	1	2	3	4	5	6	7
～-1	×	×	×	×	×	×	×
0～13	○	×	×	×	×	×	×
14～24	○	○	×	×	×	×	×
25～29	○	○	○	×	×	×	×
30～35	○	○	○	○	×	×	×
36～45	○	○	○	○	○	×	×
46～51	○	○	○	○	○	○	×
52～	○	○	○	○	○	○	○

仕様

TRiO KT-1010 より、ほんの少し高調波歪率が良くなっていますが、（同じ基板なので）眉唾臭いです。

FM 受信部
受信周波数範囲	76～90MHz
感度 (75Ω)	mono : 0.95uV / 10.8dBf
S/N 比 50dB 感度	mono : 1.8uV / 16.2dBf stereo : 24uV / 38.8dBf
高調波歪率	wide mono : 0.008% (100Hz), 0.0055% (1kHz), 0.02% (50Hz～10kHz) wide stereo : 0.01% (100Hz), 0.0085% (1kHz), 0.1% (50Hz～10kHz) narrow mono : 0.1% (100Hz), 0.12% (1kHz), 0.15% (50Hz～10kHz) narrow stereo : 0.4% (100Hz), 0.3% (1kHz), 0.6% (50Hz～10kHz)
S/N 比 (85dBf 入力, 90MHz)	mono : 99dB stereo : 91dB
キャプチャーレシオ	wide : 1.0dB narrow : 2.5dB
実効選択度	wide : 45dB narrow : 90dB
ステレオセパレーション	wide : 68dB (1kHz), 50dB (50Hz～10kHz), 40dB (15kHz) narrow : 50dB (1kHz), 40dB (50Hz～10kHz), 36dB (15kHz)
周波数特性	20Hz～15kHz ±0.5dB
イメージ妨害比 (84MHz)	95dB
IF 妨害比 (84MHz)	110dB
スプリアス妨害比 (84MHz)	100dB
AM 抑圧比	65dB
サブキャリア抑圧比	70dB
AM 受信部
受信周波数範囲	522～1629kHz
感度	10uV 250uV/m (ループアンテナ)
イメージ妨害比 (1000kHz)	40dB
IF 妨害比 (1000kHz)	60dB
S/N 比 (30%変調1mV入力)	52dB
高調波歪率 (1000kHz)	0.3% (wide)～0.8% (narrow)
選択度	30dB (wide)～50dB (narrow)
総合
出力レベル / インピーダンス	FM : 600mV / 1.7kΩ (1kHz, 100% dev) AM : 180mV / 1.7kΩ (400Hz, 100% mod)
プリセットメモリのバックアップ保証時間	3日 (72時間)
電源	AC100V, 50/60Hz
定格消費電力 (電気用品取締法)	15W
外形寸法	440(W)×64(H)×317(D)mm
重量	3.8kg
その他
発売時期	1984年
定価	59,800円