TELSTAR TR-45D
TELSTAR TR-45D をゲット!
2014年11月10日、
ハードオフ
草加西店で
お宝発見!
コロナ電業
TELSTAR TR-45D です。 ジャンク故障品とのことで税込1,620円でした。 定価は不明ですが、1998年頃にアキバの
トモカ電気
で 21,800円で売られていました。
故障品にしては高いなぁ〜と思いましたが、S/PDIF のセレクタ&メディア変換ができて、かつ、フロントパネルに
DIGITAL COPY CANCELER
と書いてあったので、ゲット!しました。
動作しないと言われると、どうしても欲しくなります。 病気かもしれません。
状況チェック
店頭で買うべきか買わざるべきかの査定
「入力1ランプ点滅して入力切換できず。部品取りに。」と書いてあります。 動作しないのなら、300円までが妥当でしょう ・・・ 高いなぁ〜
店頭で外観から査定してみました。
非常にコンパクトで金属ケースでできており、キズ無しで綺麗な逸品です。
入力は [光×2+同軸] の3系統、出力も [光×2+同軸] の3系統あります。 S/PDIF セレクタ&メディア変換 (光<-->同軸) としては魅力的です。
[化粧箱] [AC アダプタ] [取扱説明書] が揃った完品です。
「MCU が故障していたら困るなぁ」と思いつつも、品物の状態が非常に良いので買うことにしました。
自宅に持ち帰ってから判明しましたが、MCU は搭載されていませんでした。
修理できてお宝ですが、修理できなければ本当のガラクタです。 さてさて、どうなりますことやら・・・
自宅に持ち帰り、動作確認
電源は問題なく ON でき、ちゃんと動作しました ・・・ ありゃりゃ???
実際に S/PDIF 信号を入れての動作も全く正常です。 入力切換ボタン操作も正常に反応します ・・・ 修理する楽しみを奪われてしまった!
なぜ問題なく動作してしまったのか ・・・ 考察
リサイクル店でのコピー解除機ジャンク品の販売は法律に対してグレーかもしれない。
1999年10月1日に不当競争防止法が改正施行され、コピー外しを目的とする製品を販売できなくなりました。
グレーと考えるのは「ジャンク品は製品か?」という疑問があるからです。
故障品にも関わらず高い値段設定から考えて、「故障している。部品取り。」の文言で法規制を回避したかったのでしょう。
動作しないのなら、そもそも法規制に触れないでしょう。 ただの中古部品ですから。
動いてしまったのはたまたまで、売る時は故障していたのだ ・・・ という言い訳でしょう。
ハイハイ、了解です。 深く追求しませんよ。
狐と狸の化かし合い
そう言えば、買う時に言われました。
「故障していますがよろしいですか?(狐)」 「ケースとして使うから構わないよ(狸)」 「ケースとして・・・ふふん(狐)」
ハードオフって、こういう微妙な会話ができる人情溢れるお店です。 好きです!
カバーを開けてみました
基板の作りは非常に良いです。
写真をクリックすると拡大写真を表示できます。
MCU は搭載されておらず、全てハードロジックだけで動作します。
思っていたより多数の IC を使っています。
特殊な IC は以下です。 これ以外は汎用ロジック IC です。
IC
機能
TOSHIBA TC9135P
6ch Mutual Reset type Touch Switch
TOSHIBA TC9245N
デジタルオーディオインタフェース用受信復調
使っている部品のロット番号より、本機は1997年製造品と判りました。
法律規制がかかる2年前です。
回路解析
基板パターンから回路図化してみました。 右の回路図です。
回路図をクリックすると pdf で大きく表示できます。
共立電子産業
が、かつてキットとして販売していた
SK T1000
と酷似の回路です。
単に似ているというレベルではなく、デッドコピーしないと同じにならない IC のピンの使い方まで同じです。
論理的に無意味な接続があるのまで全く同じです。
設計者からライセンス供与されて製作したか、ブラックなデッドコピーかのどちらかでしょう。
そもそもコピーキャンセラなので、回路をコピー(キャンセラ)しても構わない???
逆に言うと、SK T1000 のドキュメントが TR-45D の回路動作の理解に役立ちます。
IC6 74HC161 で3分周カウンタを構成し、IC3 TC9245N の FS384 クロックから FS128 クロックを作り出します。
FS128 クロックが全体の基本クロックです。 Duty 33% です。 S/PDIF バイフェーズ信号の1ビットの周期に等しいです。
FS128 クロックの立上りで、[バイフェーズ信号のビットデータ] [IC5 27C256 出力データ] を IC4 74HC175 でホールドします。
FS128 クロックが L レベルの時に 27C256 出力データが出ます。 すなわち、FS128 の立上りに 74HC175 でホールドされる 27C256 出力データは前のステートで(アドレス指定して)読み取った出力データです。
74HC175 でホールドされたバイフェーズ信号のビットデータを FS128 クロック周期で1ビットずつ順に評価し、Copy bit の箇所で書き換えます。
IC7〜IC9 74HC161 がシーケンスカウンタです。
通常、カウンタは FS128 クロックの立上りにて +1ずつインクリメントされ続けます。 CPU でいう PC カウンタに相当します。
カウンタのリセットは、27C256 出力データに含むリセットビットを出力することで行います。
このリセットビットは 74HC175 でホールドされておらず、即時リセット実行されます。
FS128 の立下りからしばらくの時間でリセット実行され、次の FS128 立上りまでに(カウンタのリセットは)完了しています。
すなわち、次の FS128 立上りでは カウンタ=0 からのシーケンスを通常通り実行すると言う事です。
カウンタに F0〜F2 まであるのでフレーム 0〜7 の S/PDIF シリアルデータを評価・書換可能ですが、Copy bit はフレーム2にあるので、F2 は冗長です。
シーケンスカウンタとシーケンスデータを持っている 27C256 との接続がグチャグチャ
普通に設計するとカウンタと 27C256 のビット並びを合わせて接続しますが、この接続に規則性がありません。
規則性を持った綺麗な接続のほうが設計誤りを防ぐ効果があります。
あえてグチャグチャにして判りにくくして、簡単に設計意図を見破られないようにしているのだと思います。
27C256 は 0000〜7FFFh のアドレス空間を持ちますが・・・
A14〜A15 がプルアップされているので、6000〜7FFFh のアドレス空間しか使っていません。
0000〜5FFFh のアドレス空間のデータは意味を持ちません。
そもそもは 27C64 を使う前提で設計されていたと思います。 27C64 を何の変更も無しに実装可能です。
使ってみました
デザイン
可もなく不可もなく実用的なデザインです。
100(W)×33(H)×123(D) mm とコンパクトなのが取り柄です。
金属ケースなので雑音妨害に強く、やや重いので設置が安定します。
付属 AC アダプタは、トランス式のごく普通のもので DC14V/200mA 仕様です。 DC プラグは 外径5.5/内径2.1mm です。
操作ボタン
OFF ボタン
電源 OFF とします。
1〜3 ボタン
1〜3 ボタンのいずれかを押すことにより、入力切換できます。 同時に電源 ON となります。
1 ボタンを押すと [1 の赤色 LED]、2 ボタンを押すと [2 の緑色 LED]、3 ボタンを押すと [3 の橙色 LED] が点灯します。
TR-45D から離れていても LED の色で、どの入力が選択されているか判ります。
AC アダプタをコンセントに差し込んだ直後は必ず OFF となります。 AC アダプタをコンセントから抜く前の入力選択状態は記憶していません。
リアパネルの端子
[光入力-1] [光入力-2] [同軸入力-3] [光出力] [同軸出力] [DC 入力] 端子があります。
フロントパネル側にも、もう1つ [光出力] 端子があります。 これらの3つの出力端子には同じ S/PDIF 信号が出ます。
DC 入力端子の定格は DC14V 120mA ですが、TR-45D に安定化電源 IC が内蔵されているので DC8〜15V に対応します。
評価
セレクタ部の操作性は良好で、光<-->同軸 間のメディア変更もできます。
S/PDIF 信号を取り込んでから波形整形して再び送出しているので、ジッタ除去効果もあります。
ジャンクの山から
お宝発見!
でした。
ドキュメント
取扱説明書
オマケ ・・・ 27C256 に書き込むシーケンスデータを設計してみました
前提
趣味の一環として、興味を持って楽しく独自に設計したものです。
27C256 は面付けタイプで、ハンダ付けされており、簡単には取り外せません。 このため、オリジナルの 27C256 を読み取って逆アセンブルした訳ではありません。
シーケンス作成はコンピュータのプログラムを記述するのと、さほど変わらないので、同じ動作をするシーケンスは何通りも記述できます。 従って、間違いなく TR-45D オリジナルのシーケンスデータとは違うはずです。
ケアレスミスを最小限にするため、エクセルの計算式を使って一部自動化しています。
ROM Address / Data への変換です。 計算式で機械的にやってます。
あくまで参考です。 どこか考え間違いしているかもしれず、動作する保証はありません。
私にとって、考えることが楽しいのであって、実装するのは面倒なので動作確認していません。
概略シーケンス動作
右のフロー図が概略動作です。
フロー図をクリックすると excel の設計表が表示できます。
通常動作
入力ビット (IC3 TC9245N の DOUT) を変化させないで、そのままビット出力 (IC4 74HC175 の 1Q) します。
具体的には、入力ビットは 27C256 の A0 に接続されているので、A0=L の時は ビット出力=L、A0=H の時は ビット出力=H となるようシーケンスを組みます。
通常はこの動作をしますが、Copy bit の場所で必要に応じてビット反転します。
B プリアンブルの検出
B プリアンブルは、ブロックの先頭にあります。 特殊なビット配列になっているため、検出可能です。
入力ビットを1ビットずつ順に B プリアンブルパターンかチェックします。
B プリアンブルパターンと違うと判明すると、シーケンスカウンタをリセットして、もう一度最初からチェックし直します。
(注) 次の入力ビットからではなく、現在の入力ビットからチェックし直します。
B プリアンブルと判別できれば、シーケンスカウンタはそのままカウントを続けます。
Copy bit の反転
IC3 TC9245N の COPY=L であれば、フレーム2 の Copy bit を反転し、Copy bit=1 と書換してビット出力します。
IC3 TC9245N の COPY=H であれば、既に Copy bit=1 のはずなので、書換せずにそのままビット出力します。