TOPPING TP-10 MARK-U

TOPPING TP-10 MARK-U をゲット!

〜手乗りデジタルアンプ〜

2009年1月16日、TOPPING TP-10 MARK-U という Shell Mini Amplifier タイプの超小型デジタルパワーアンプを入手しました。 税込7,980円でした。

巷ではこのような超小型超軽量のアンプを デスクトップアンプ と呼ぶようです。 また、アンプの方式から T-AMP と呼ばれることもあります。

ゲインは十分あるので、チューナーや CD プレーヤなどと直結してプリメインアンプ同様に使うことが可能です。

  1. かなり前(2000年過ぎ)から専用 IC を使った D 級 PWM 方式デジタルパワーアンプの自作がアマチュアの間でブームになっています。 メーカ製品のデジタルアンプはまだ少ないようです。

  2. 某小メーカ で販売しているデジタルアンプはデザインがイマイチです。 オーディオは趣味なので、デザインも趣味性の高いものを使いたいです。 デザイン性を求めて電網徘徊していたら、中国製の本機が見つかりました。 中国製品は中身はともかくミテクレは良いです。

  3. 中国深センからの輸入です。 EMS 便 なので、軽いものであれば送料はそれほどでもなく(今回は1,200円)、到着日数は船便(2ヶ月)より速く、料金は国際小包より安いです。 注文してから8日間で受け取ることができました。 また、EMS 便はトレースがとれます。

  4. デジタルアンプの音を評価したくての導入です



お断り

  1. 巷では「PWM 方式 D 級アンプ」を「デジタルアンプ」と呼び、アナログ入力になります。 デジタルとは言うものの、実際にはアナログ手法によって PWM 信号を生成しているので、本当にデジタルアンプか?というと、そうではないです。 やはり、「PWM 方式 D 級アンプ」と呼ぶのが正しいです。

  2. 同様に、DAI (デジタル・オーディオ・インタフェース) と呼ばれるデジタル入力をデジタル演算して PWM 信号まで作成してしまうアンプを「フルデジタルアンプ」と呼びます。 フルデジタルアンプ全体が DAC のような動作になります。 デジタル信号しか扱えないので、アナログ信号を扱うにはフルデジタルアンプの入力部に ADC を外付けする必要があります。

  3. 以上より、「巷で言うデジタルアンプ」→「PWM 方式 D 級アンプ」で、「巷で言うフルデジタルアンプ」→「デジタルアンプ」が正しいと思うのですが、ここでは通例に従い、「PWM 方式 D 級アンプ」を「デジタルアンプ」と記載しています。



基板

  1. TP-10 MARKUの分解の仕方は以下です

    1. [VOLUME] ツマミを取り外し、[VOLUME] シャフトの留めナットを外します。

    2. リアパネルの角にある4本のネジを外します。

    3. リアパネルを後ろ側に引くと、リアパネルごと基板が外れます。

  2. 写真はケース内に入っている基板(と同じもの)です

  3. 使用 IC は、元々カーステレオ用途に開発された Tripath TA2024C 1個だけです

  4. 電源は DC 入力となっており、スイッチング型 AC アダプタを使うのが標準となっています

  5. 右の図は PWM 変調デジタルパワーアンプの原理図です(一例です)

    1. オーディオ信号を三角波キャリアを使って PWM 変調します。 具体的にはオーディオ信号と三角波をコンパレータにて比較し、差分を PWM パルスとして出力します。

    2. この PWM パルスを FET SW 段で電力増幅して、電源電圧でフルスイングします。

      • ですから、電源電圧が変動するとその変動分がそのまま出力に影響を与えます。 デジタルパワーアンプでは電源の安定度が重要です。

      • FET SW は電源電圧で ON/OFF するだけですから、理論上、FET SW で消費される損失(=熱として放出)がありません。 よって、FET SW の放熱器は小さくて済むのです。

    3. FET SW 段の PWM パルス出力をローパスフィルタ (LPF) で元のアナログ出力に変換し、負荷(スピーカ)を駆動します。

      • 通常、ローパスフィルタの設計は負荷(スピーカ)インピーダンスも含めた時定数設定になっています。

      • このため、負荷(スピーカ)のインピーダンスを変えると、ローパスフィルタの部品定数(通常、コンデンサ)も変える必要があります。

    4. デジタルアンプはこの原理図で判るように、出力部は基本的に Non-NFB です。 よって見掛けはアナログアンプより特性が悪いように見えることがありますが、スピーカを実際につないだ時の性能はアナログアンプに劣ることはありません。 グイグイとスピーカに電力供給する力はアナログアンプより上と思います。

    5. ちなみに Tripath 社では D 級 (Class-D) と呼ばず Class-T と言っています。 PWM 変調キャリア周波数を可変にした方式です。 TA2024C ドキュメント によると、100kHz〜1MHz の可変キャリアと書いてあります。



回路のチェック

  1. 右の回路図は、内部調査して私が回路図化したものです。 回路図をクリックすると原寸の pdf ファイルが開きます。

  2. 回路的には Tripth 社アプリケーションノートの推奨回路とほぼ同じです。 こういうデジタル製品は世界中のどこの国が作っても性能にほとんど差が出ません。 差を付けるとしたら、部品や基板のグレードくらいしかありません。

  3. TA2024C を使っています。 TA2024 シリーズでは最新の IC です。 このためか、電源 ON のポップノイズが僅かです。

  4. [VOLUME] 抵抗器に ALPS 50kΩ A カーブを使っています。 これに対して TA2024C アンプ部の入力インピーダンスは 20.5kΩです。

  5. 可変抵抗器 R15, R16 によるスピーカ出力電圧オフセット調整回路が追加されています。

  6. FAULT〜MUTE を接続しています。 過電流と温度異常検出時にスピーカ出力を切り離します。

  7. デジタルアンプの場合、ローパスフィルタ(TA2024C〜スピーカ端子間に実装)の設計が重要です。 この回路定数の場合のカットオフ周波数 (fc) は以下のように計算できます。

    fc = 1/(2π√(L1×(C3+2×C7)))
       = 1/(2π√(10×10**-6×(0.22+2×0.22)×10**-6))
       = 62.0kHz
    


調整手順



特性実測

  1. 前提

  2. 周波数特性 (1W 出力時) ・・・ 元データは こちら です。



使ってみました

  1. 全体に

  2. リアパネルです

  3. 検聴しました

  4. 入力セレクタ

  5. まとめ



デジタルアンプって結構おそろしい存在です

  1. 無味無臭/無色透明/乾燥系の音質なので、ソースの音質をさらけ出してしまいます。 FM チューナーの僅かの音質の違いがよく聴き取れます。 FM チューナー調整のレファレンスアンプとして、かなり使えます。

  2. 同様にスピーカの音色をそのまま出してしまいます。 よって、プアなスピーカはプアな音が、優秀なスピーカは優秀な音が、ストレートに出ます。

  3. 巷のデジタルアンプの評価で、オーディオシステムが高級〜超高級グレードの人達のほうが高評価している傾向があるのは、こういう理由と思います。 数百万円のアナログアンプを使う人はスピーカにも数百万円を費やしています。 CD プレーヤもそれなりに高価な製品でしょう。 ここでアンプだけを4,800円のデジタルアンプと取り替えるとデジタルアンプのほうが音の色付けがないので、勝ってしまうことがあるのでしょう。

  4. こうなると、フルデジタルアンプも試してみたくなります。 フルデジタルアンプでは CD プレーヤなどのデジタル入力をデジタル演算して PWM (パルス幅変調)信号まで作成します。 一番最後のスピーカ直前の LPF(ローパスフィルタ)が唯一のアナログ部です。 音量調整もデジタル演算でやってしまうので、左右音量のトラッキング誤差はゼロです。 フルデジタルアンプ全体が DAC のようなイメージです。 アナログ部がほぼ無いので S/N 120dB、左右セパレーション 120dB などと、DAI(デジタル・オーディオ・インタフェース)規格そのものの特性が出ます。 特に S/N が高いのが有難い。

  5. フルデジタルアンプでは今までのアナログアンプの常識と全く違います。 アナログアンプはやはり「増幅器=アンプ」ですが、フルデジタルアンプでは増幅という概念がなく、単なる「デジタル演算器=コンピュータ」です。 厳密に言うとアンプじゃないです。 変換器です。

  6. こうなると今後のアンプは5万円以下のフルデジタルアンプだらけになりそうですが、オーディオメーカはこれでは困るのです。 フルデジタルアンプは蚊帳の外の製品シリーズにして「本流は高価なアナログアンプですよ、やはり高価なアンプのほうが高音質ですよ」 ・・・ という宣伝をやっています。 いずれ、大きな世界的な波で崩れると思いますが。

  7. フルデジタルアンプの登場により、オーディオの世界の入力ソース(CD プレーヤなど)からアンプまでは全てデジタル化できます。 最後に残ったのはスピーカです。 スピーカはオーディオ史の最初から今日まで原理が全く変わっていないです。 一番遅れた機器です。 そのうち、デジタルスピーカなるもの(振動板ではなく空気の制御をデジタルで直接行うような?)が出てくるのでしょうかね。



仕様