YAMAHA TX-2000 (4号機) が到着
2022年9月7日、大阪市旭区の S さんより、
YAMAHA TX-2000
の修理依頼品が到着しました。
程度&動作チェック
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修理依頼者のコメント
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NHK-FM がやっと入る程度で感度が悪く、音質も良くありません。
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ヤマハの西日本サービスセンタに修理依頼しましたが、[入力部のトランジスタ等に問題があり、部品がなく修理不可] でした。
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修理&再調整をお願いします。
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外観
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製造シリアル番号のシールが剥がされており、電源コードが写真のものに交換されて 3P プラグになっています。
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メーカに修理を断られた真の理由は、おそらくこれでしょう。
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[シリアル番号が無い] [改造されている] ものは、メーカで修理を受け付けません。
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フロントパネルの透明アクリルに1本、目立つ線キズがありますが、これ以外は綺麗です。
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リアパネルはスレはありますが綺麗です。
サイドウッドは概ね綺麗です。
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天板は後ろ側にキズがありますが、これ以外は綺麗です。
底板は綺麗です。
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[AM ループアンテナ] が添付されなかったので完全な AM 調整ができません。
とりあえず、手持ちの [AM ループアンテナ] で調整しますが、修理依頼者の [AM ループアンテナ] では最高感度になりません。
AM は [AM ループアンテナ] も同調回路の一部なのです。
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電源 ON してチェック
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電源は問題なく入り、ランプ切れはなく、操作もできます。
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FM 受信
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感度が著しく低下しており、S メータは全く振れません。
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放送局に受信周波数を合わせると、ホワイトノイズの中にかすかに放送が聞こえる程度です。
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重症です!
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AM 受信
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問題なく受信でき、感度も良い感じです。
AM は問題なさそうです。
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カバーを開けてチェック
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内部は綺麗ですが、誰かが内部をいじくった痕跡があります。
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FM フロントエンドの金属カバーのあちこちにヘコミがあり、部品を交換した痕跡もあります。
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本来あるはずの束線バンドが2本無くなっています。
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使っている IC のロット番号より、本機は1989年製造品とわかりました。
リペア
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FM の感度が著しく低下している
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原因は FM フロントエンドに使われているトリマコンデンサの故障です。
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特に [VC1] を回しても変化が無く完全故障です。
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[VC2] [VC3] [VC4] も劣化しています。
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全数 (4個) をセラミックトリマコンデンサ 10pF と交換しました。
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交換後に再調整して本来の感度に戻り、[STEREO] 表示も出ます。
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写真は元々 FM フロントエンドに実装されていたトリマコンデンサです。
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本来あるはずの束線バンドが2本無くなっている
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半田クラック対策
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本機は33年物ビンテージ (2022年時点) なので、この対策 (予防) はやったほうがよいです。
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[リアパネルの端子]〜[チューナ基板] の半田付け部分、および、[チューナ基板] 内のアースバーを補修半田付けしました。
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照明ランプが切れた
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TX-2000 はフィラメントランプとオレンジフィルタを使って透過 LCD を裏側から照射しています。
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オリジナルは 8V/0.15A の麦球×2個の直列回路になっています。
ランプが1個切れると、2個とも消えます。
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ランプ照明が消えるとディスプレイは真っ暗になり、周波数やインディケータが見えなくなります。
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ヤマハに聞いたのですが、この補修部品の在庫は既に無いとのこと。
ヤマハではもう TX-2000 の修理はできないようです。
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フィラメントランプの一般品は既に製造中止されており、僅かに自動車用はまだ製造されています。
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自動車用フィラメントランプで Stanley 14V/0.1A がサイズ的に使えそうです。
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オリジナル球は直径 4mm ですが、Stanley ランプは T5 (直径 5mm) で少し大きいですが、なんとか実装できます。
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自動車用ですから電圧が 14V ですが、これも点灯回路を少し変更すれば、なんとかなります。
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以下のように回路変更して Stanley ランプを取り付けました。
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14V の Stanley ランプが使えるよう、並列駆動回路に変更しました。
1個切れると全部消灯することはなくなります。
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オリジナルの明るさと同じくらいになるよう、R329 の定数を変更しました。
R329 を入れないと明る過ぎます。
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[R329]→[R329a と R329b の並列] としましたが、基板は既に並列対応できるパターンになっていました。
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点灯試験でちゃんと補修設計意図通り、オリジナルと全く変わらず、
見事!照明できました!!!
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ランプ電圧は、定格 14V に対し実測 11.4V の 81% 駆動となりました。
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ランプ1個あたりの電流は、定格 0.1A に対し実測 0.084A の 84% 駆動となりました。
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このように電圧と電流を抑えておくと、ランプが長持ちします。
再調整
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内部電源の電圧チェック
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以下のように問題なく良好でした。
VP |
標準電圧 |
実測電圧 |
判定 |
+30 |
+29±1V |
+28.7V |
〇 |
+12 |
+12.5±0.5V |
+12.4V |
〇 |
-12 |
-12.5±0.5V |
-11.9V |
〇 |
+6 |
+6±0.5V |
+6.12V |
〇 |
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調整結果
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TX-2000 (1号機)
に記載の調整手順で実施ました。
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FM フロントエンドが大きくズレていました。
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FM ステレオセパレーションも再調整で大きくアップしました。
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ステレオ受信時の高調波歪率 (1kHz) は [WIDE:0.03%] [NARROW:0.05%] と優秀な数値に調整できました。
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調整後の FM ステレオセパレーションとキャリアリークは以下です。
非常に良好な数値です。
項目 |
IF BAND |
L |
R |
単位 |
ステレオセパレーション (1kHz) |
WIDE |
70 |
70 |
dB |
NARROW |
70 |
70 |
dB |
パイロット信号キャリアリーク |
WIDE |
-73 |
-69 |
dB |
オーディオ出力レベル偏差 (MONO) |
0 |
-0.01 |
dB |
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AM はループアンテナが添付されなかったので、軽くトラッキング調整しました。
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AM の場合、ループアンンテナも同調回路の一部なので、無いと完全な調整ができません。
使ってみました
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デザイン
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YAMAHA のデザインは実に良いです。
緻密な感じもします。
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天板までアルミ材で高級感があります。
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サイドウッドも高級感を醸し出しています。
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FM 受信
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感度は非常に高く、妨害波排除能力も高いです。
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S/N が抜群に良く、非常にクリアに聴こえます。
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柔らかい音の中にも解像度がある素晴らしく良い音です。
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音のエネルギーの重心がやや低音側にあります。
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揺らぎを感じないので、ピアノの音が豊かで綺麗に出ます。
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AM 受信