YAMAHA TX-2000 (2号機) が到着
2022年4月30日、新潟県阿賀野市の K さんより、
YAMAHA TX-2000
の修理依頼品が到着しました。
程度&動作チェック
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修理依頼者 (K さん) のコメント
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TX-2000 の FM 受信の感度が悪くなり、手探りで部品 (電解コンデンサ等) を変えてみましたが、お手上げです。
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修理調整をお願い致します。
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外観
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製造シリアル番号は [E034263XZ] です。
全体にややスレはあるが、まあまあ綺麗です。
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使っている IC のロット番号より、本機は1993年製造品とわかりました。
おそらく、最後期品では?
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ディスプレイの透明ブラスチック上側にポチポチとキズがあるが、致命的ではありません。
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ディスプレイ部の内部にゴミが溜まっています。
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フロントパネルの操作部の左側がグラグラしています。
ネジが外れている?
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サイドウッドがオリジナルから別物に交換されています。
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電源 ON してチェック
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電源は問題なく入りました。
ボタン操作も問題ないように思われます。
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FM 受信
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感度が悪く、S メータは僅かしか振れません。
AUTO TUNING ができません。
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同調点ズレがあります。
80.0MHz の放送が 79.9MHz あたりでかすかに受信できます。
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なんとか音は出ますが、ステレオ感は全く感じません。
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FM 受信は重症です!!!
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AM 受信
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正常に受信でき、AUTO TUNING も正常にできます。
AM 受信は問題ないです。
リペア
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フロントパネルの操作部の左側がグラグラしている
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フロントパネルをバラバラに分解して調べました。
予想は [ネジが外れているのではないか] でしたが、違いました。
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操作部はボンドにて接着されており、このボンドが剥がれたためでした。
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接着部を無水アルコールで脱脂してから、再度ボンドを塗布しました。
一晩経ってから、再取り付けして直りました。
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結構時間がかかり、丸一日を要しました。
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ディスプレイ部の内部にゴミが溜まっている
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上記のフロントパネル分解作業と一緒に内部清掃して綺麗になりました。
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FM で同調点ズレがあり、ステレオ感を全く感じない
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後述の再調整で全て直りました。
主な原因は CSL 機能の調整ズレでした。
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YAMAHA の CSL 機能付きチューナの調整は難しいです。
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CSL が狂うと同調ズレのように見えます。
この場合、同調点の調整をしても同調ズレは直りません。
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感度が悪く、S メータは僅かしか振れない
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再調整してからは再発していませんが、念のため、関連部品を交換しました。
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FM フロントエンドの [トリマコンデンサ]×4個を一斉交換
トリマコンデンサの裏側はハトメ構造になっており、経年変化で接触不良になりやすいです。
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[RF ATT] 切換用の [Q3] を [2SC3330S]→[2SC1815GR] に交換
これが勝手に動作すると感度が落ちたようにみえます
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[ANT A/B] 切換用の [Q32] [Q33] を [2SA1317S]→[2SA1015GR] に交換
アンテナ A/B どちらでもない状態になると感度が落ちたようにみえます
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その他
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チューニングノブでの周波数変化がやや不安定なので、エレクトロニッククリーナでロータリエンコーダをクリーニングしました。
再調整
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内部電源の電圧チェック
VP |
標準電圧 |
実測電圧 |
判定 |
+30 |
+29±1V |
+28.9V |
〇 |
+12 |
+12.5±0.5V |
+12.4V |
〇 |
-12 |
-12.5±0.5V |
-12.3V |
〇 |
+6 |
+6±0.5V |
+6.12V |
〇 |
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調整結果
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TX-2000 (1号機)
に記載の調整手順で実施ました。
あちこちズレまくっていました。
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T13 のコアの一部が欠けていましたが、まだ使える程度だったので交換していません。
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調整後の FM ステレオセパレーションとキャリアリークは以下となりました。
特に問題なく良好な数値です。
項目 |
IF BAND |
L |
R |
単位 |
ステレオセパレーション |
WIDE |
58 |
58 |
dB |
ステレオセパレーション |
NARROW |
50 |
50 |
dB |
パイロット信号キャリアリーク |
WIDE |
-83 |
-70 |
dB |
オーディオ出力レベル偏差 (MONO) |
0 |
0 |
dB |
使ってみました
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FM 受信
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感度は非常に高く、妨害波排除能力も高いです。
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S/N が抜群に良く、非常にクリアに聴こえます。
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柔らかい音の中にも解像度がある素晴らしく良い音です。
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音のエネルギーの重心がやや低音側にあります。
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揺らぎを感じないので、ピアノの音が豊かで綺麗に出ます。
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AM 受信