YAMAHA T-2 (2号機) が到着!
2022年11月24日、東京八王子の A さんから
YAMAHA T-2
の修理依頼品が到着しました。
この写真は照明 LED 化後です。
FM 専用機
で定価13万円の高級チューナです。
程度&動作チェック
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修理依頼者のコメント
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症状1
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稼働中に R ch. の出力が途絶え、電源再起動すると回復する。
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症状2
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稼働中に両 ch. にザーザーという雑音が乗って出力が途絶える。
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電源再起動すると回復するが雑音は残る。
数時間後に電源再投入すると回復している。
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症状3
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1回だけですが、ほぼ毎週聴いている番組の DJ がしゃべる部分で、DJ の音声が全く聴こえず、BGM だけが聴こえました。
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おかしいと思って、T-2 の電源を OFF/ON したら、正常になりました。
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左右のチャンネルのどちらかが逆相になったかのようですが、こんなことはあり得るでしょうか?
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[症状1] [症状2] [症状3] とも、出力異常時の表示類はすべて正常です。
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可能でしたら修理と表示照明のブルー LED 化改造もお願いできないでしょうか?
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外観
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製造シリアル番号は [01699] で、電源コードの製造マーキングよりは製造年は不明でした。
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致命的なキズやスレはありませんが、全体として並みよりややマシな中古状態です。
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リアパネルの端子類に錆が出ています。
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この機種によくある [S メータ] [T メータ] の指針の塗装ハゲは出ておらず、良好です。
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電源 ON してチェック
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電源が入り、照明ランプ切れはありません。
周波数表示器と操作ボタンは良好です。
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特に問題なくステレオ受信でき、音も出ました。
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不具合現象の再現試験を2日以上実施しましたが、音が出なくなる現象は再現しませんでした。
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カバーを開けてチェック
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ほぼ密閉構造のため、内部は非常に綺麗です。
目視で劣化がみられる部品は無さそうに思いました。
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使用 IC のロット番号より、本機は [1977年製造品] とわかりました。
カバーを分離する
この機種はカバーを分離するのが難しいので、順番に説明します。
筆者にとっては備忘録です。
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裏返しにして、左の写真で [黄〇] で囲んだネジ×7本を外すと底板を外すと、右の写真のようになります。
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そうです。
この機種は天地逆さまに基板などが実装されているのです!
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カバーと内部ユニットを連結しているネジを外します。
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左の写真で [赤〇] で囲んだネジ×4本と [黄〇] で囲んだネジ×5本を外します
[赤〇] と [黄〇] で囲んだネジは種類が異なります。
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右の写真で [黄〇] で囲んだ穴から 2mm 六角ドライバ (写真に写っている) で [同調ノブ] の根元にある2箇所の留めネジを緩めて、[同調ノブ] を外します。
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これでカバーと内部ユニットを分離する準備が整いました。
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リア側を 5cm 程度持ち上げて、リア方向にそっと引くと、下の写真のようにカバーが分離できます。
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今回は照明フィラメントランプを LED 化するので、ランプの位置・形状・取付状態を確認します。
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左の写真で [黄〇] で囲んだランプはメータ照明用です。
1個でメータ×2個を照明しています。
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右の写真で [黄〇] で囲んだランプは周波数パネル照明用です。
1個で周波数パネル全体を照明しています。
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右の写真で [赤〇] で囲んだランプ×2個は指針照明用です。
2個で間接照明しています。
間接照明は珍しいです。
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結局、4個のフィラメントランプは全て同じ 14.5V/80mA 麦球とわかりました。
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照明だけで 14.5V×80mA×4個=4.6W も電力消費しています。
リペア
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[音が途絶える] [雑音が入る] [音が反転する] の現象
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再現試験しても現象が出ないので、カバーを開けて調査しました。
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[音が反転する] 現象より、[ポストアンプ基板] (オーディオ出力アンプ) が怪しいと推定しました。
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[ポストアンプ基板] のグランド線は1本だけです。
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従って、ここが外れると [L-R] [R-L] 信号が出力されてしまいます。
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[ポストアンプ基板]〜[チューナ基板] を接続する [#5] [#6] コネクタを揺すると、雑音が出て音が途切れます。
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原因は [#5] [#6] コネクタリード部での半田クラックです。
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ルーペを使って目視確認すると、ハッキリわかる半田クラックが多数ありました。
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[音が途絶える] [雑音が入る] [音が反転する] の現象と辻褄が合います。
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再現試験で現象が出なかったのは ・・・
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輸送中の振動でたまたま半田クラックの接触不良が直っていたのでしょう。
これも辻褄が合います。
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対策
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[#5] [#6] コネクタを補修半田付けして直りました。
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念のため、[チューナ基板] にあった [#4] コネクタも補修半田付けしました。
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以上で直りました!
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もうコネクタを揺すっても音が途切れるなどの現象は出なくなりました。
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照明ランプの LED 化
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下の回路図のように、オリジナルのフィラメントランプから LED に交換しました。
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LED は直流駆動する必要があるのですが、オリジナルで既に一部直流化されていたので、流用しました。
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LED にすると電流が極端に減るので直流電圧が上がり、PL1 間電圧が DC19V になりました。
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C269 が [100uF/16V] では耐圧オーバーになります。
そこで、[100uF/25V] に交換しました。
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LED には 3mm 砲弾型 超高輝度 25000mcd@20mA 白色タイプを使いました。
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LED は 2.5V 程度もあれば点灯するので、4本直列接続としました。
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1kΩの電流制限抵抗を入れて 8.4mA で LED を点灯させました。
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消費電力は 19V×8.4mA=0.16W となりました。
しかもフィラメントランプの時より明るくなりました。
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フィラメントランプの時は 4.6W 消費していたので、4.4W も省エネになりました。
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以下の写真は、作業のためカバーが外れた状態ですが、LED 化後です。
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LED 化すると、どうしても色目が変わってしまいますが、この色も現代的な感じがして良いです。
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45年物ビンテージチューナ (2022年時点) が現代的なチューナに変身しました。
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リアパネルの端子類に錆が出ている
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RCA 端子の錆は音質に影響する懸念があるので、左の写真の金メッキの高級タイプに交換しました。
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写真は右チャンネル用で識別リングが赤ですが、左チャンネル用は識別リングが白です。
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削り出しで製作されたお高い端子です。
金ピカが眩しい!
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筐体とは白いリングスペーサで絶縁できます。
まさにオーディオ用です。
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右の写真は交換後です。
金ピカになった RCA 端子に比べてアンテナ端子がみすぼらしく見えますがやむを得ないです。
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交換前に実装されていた部品の記録
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下の写真は交換前に実装されていた部品です。
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左から [フィラメントランプ]×4個、[100uF/16V] 電解コンデンサ、[指針照明フィルタ]×2個、[4P RCA 端子] [2P RCA 端子] です。
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[指針照明フィルタ] は特に必要性を感じなかったので再取り付けしませんでした。
再調整
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電圧チェック (VP)
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[#4] [#5] は [チューナ基板] に実装されたコネクタです。
VP |
標準電圧 |
実測電圧 |
判定 |
#4-4pin |
+5V |
+5.00V |
〇 |
#5-5pin |
+13V |
+11.9V |
〇 |
#5-6pin |
-13V |
-14.2V |
〇 |
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調整結果
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T-2 (1号機)
に記載の手順で再調整しました。
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FM ステレオセパレーションとキャリアリークは以下となりました。
良好な数値です。
項目 |
IF MODE |
L |
R |
単位 |
ステレオセパレーション (1kHz) |
LOCAL |
56 |
55 |
dB |
DX |
27 |
27 |
dB |
パイロット信号キャリアリーク |
LOCAL |
-71 |
-67 |
dB |
オーディオ出力レベル偏差 (MONO) |
0 |
+0.10 |
dB |
REC CAL |
328.1 |
Hz |
-6.5 |
-6.5 |
dB |
使ってみました
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デザイン
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まずはズッシリ重たいことに驚きます。
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全体が厚いアルミ材で出来ており、とっても高級感があります。
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YAMAHA らしい優れたデザインです。
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操作性
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一般的な操作は直感で判ります。
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チューニングノブの動きは高級機らしい重みがあってスムーズです。
ダイヤルスケールと指針がピタリ合います。
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周波数のデジタル表示は放送局に同調ができた時にだけ表示されます。
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アンテナ端子は F 端子のため、妨害電波の混入を防げます。
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FM 受信
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妨害波排除能力は強力です。
出てくる音は解像度感のあるシッカリした音です。