TRiO KT-990 (2号機) が到着
2022年6月26日、さいたま市の N さんより
TRiO KT-990
の修理&再調整依頼品が到着しました。
パルスカウント検波
が特長のチューナです。
程度&動作チェック
-
修理依頼者のコメント
-
いつの間にかステレオランプが点灯していないことに気が付きました。
実際、ステレオ感がありません。
-
修理&再調整をお願いします。
-
外観
-
製造シリアル番号は [30400930] です。
-
フロントパネルは綺麗ですが、以下の汚れ等があります。
-
スイッチのメタルメッキ部分に汚れと若干のサビがあります。
-
フロントパネルの天板への折り返し部分に汚れがあります。
-
フロントパネルの底板への折り返し部分に何やらテープ跡のようなものが付着しています。
-
リアパネルに薄いサビがあります。
以下の改造と汚れ等があります。
-
FM アンテナ入力端子が [ワンタッチ端子]→[F端子] に交換されています。
-
[電源コード直出し部分]→[メガネ端子] に交換されています。
-
上記2箇所の改造は上手にされていて、好感が持てます。
修理依頼者は器用なかたのようです。
-
AM アンテナ端子にサビがあります。
-
天板は少し汚れはありますが綺麗なほうです。
天板をサイドから留めるネジに銀色の着色が施されています。
-
底板は薄っすらとしたサビがありますが、特に問題ないです。
-
[AM ループアンテナ] の添付がありません。
AM の場合、ループアンテナも同調回路の一部なので、完全な調整ができません。
-
電源 ON してチェック
-
ランプ切れはありません。
-
内部にある周波数ダイヤルパネルで、チューニングノブの左近辺にキズがあります。
そう気にはならないです。
-
内部にゴミが溜まっていないので、おそらく (修理依頼者が) 内部清掃した時についてしまったキズと思います。
-
FM 受信
-
同調動作は正常で S メータも振れますが、[STEREO] ランプが点灯しません。
-
チューニングノブを回すとガサゴソという雑音が出ます。
特に周波数の低い箇所で出やすいです。
-
AM 受信
-
AM ループアンテナが添付されなかったので、KT-1100 のループアンテナでチェックしました。
-
受信良好です。
感度も良いです。
-
カバーを開けてチェック
-
IC のロット番号より、本機は1982年製とわかりました。
-
FM フロントエンドの OSC 同調回路に (修理依頼者で) 外付けでトリマコンデンサが追加されていました。
-
追加された外付けトリマコンデンサの取付が雑なので、ここは手直ししたほうがよさそうです。
-
FM フロントエンド内にオリジナルのトリマコンデンサが付いたままなので、これは取り外したほうがよいです。
-
オリジナルのトリマコンデンサは腐食しているので、いつ短絡してもおかしくないです。
リペア
-
FM 受信で [STEREO] ランプが点灯せず、音もステレオで出ていない
-
原因は [MODE] スイッチが常時モノラル側に倒れていたからです。
-
フロントパネルに見える [MODE] スイッチは長〜いレバーで連結されています。
-
この連結部が外れ、[MODE] スイッチの本体を常に押していました。
これを正しく連結して、直りました。
-
(修理依頼者の) 内部清掃時の組み立てミスでしょう。
-
外付けトリマコンデンサの取り付けが雑
-
[豆ラグ板]×2枚を使って右の写真のように手直ししました。
-
下側の赤い部品が外付けトリマコンデンサです。
-
FM フロントエンド内にある故障したトリマコンデンサは除去しました。
-
チューニングノブを回すとガサゴソという雑音が出る
-
原因はバリコン軸の接触不良です。
以下のように修理しました。
-
エレクトロニッククリーナ
を軸受けに噴射し何度もバリコン羽を動かすと緑青サビが湧き出てきます。
-
湧き出た緑青サビを爪楊枝で丹念に落とします。
-
[1] と [2] を何度も何度も繰り返します。
-
仕上げに、軸受けに
コンタクトグリース
を塗布して防錆処置します。
-
結構手間がかかりましたが、以上で直りました。
-
スイッチのメタルメッキ部分に汚れと若干のサビがある
-
完全ではありませんが、できる範囲でサビを除去しました。
再調整
-
電圧チェック
-
以下のように正常でした。
VP |
標準値 |
実測値 |
判定 |
J151 |
+14V |
+14.4V |
〇 |
-
調整結果
-
KT-990 (1号機)
に記載の手順で調整しました。
-
高調波歪率は WIDE 1kHz で stereo 0.054% でした。
問題はありません。
-
FM ステレオセパレーションなどは 以下となりました。
良好な数値です。
項目 |
IF BAND |
L |
R |
単位 |
ステレオセパレーション (1kHz) |
WIDE |
62 |
61 |
dB |
NARROW |
50 |
53 |
dB |
パイロット信号キャリアリーク |
WIDE |
-54 |
-56 |
dB |
オーディオ出力レベル偏差 (mono) |
0 |
-0.06 |
dB |
REC CAL 信号 |
398.4 |
Hz |
-6.0 |
-6.0 |
dB |
-
AM は KT-1100 の AM ループアンテナで最高感度になるよう調整しました。
使ってみました
-
デザイン
-
デザインが優れた薄型チューナです。
-
ダイヤルスケール部全体がイルミネーション照明されており綺麗です。
-
ダイヤルスケール部には本物の強化ガラスが使われています。
-
チューニングノブは直径 41mm の無垢アルミに輝きのあるスモークアルマイト処理がされており、質感があります。
-
感度や音質
-
FM は TRiO らしい高解像度でカチッとした高音質です。
感度も良いです。
-
やはり、パルスカウント検波の音は良いです。
別格です。
-
AM は高感度で S/N が高いです。
[IF BAND] を「WIDE」にすると高音がよく出ます。