Marantz ST-8

Marantz ST-8 をゲット!

シャンパンゴールドの超美しいチューナ!!!

2014年2月3日、埼玉熊谷の K さんから Marantz ST-8 を寄贈いただきました。 しばらく忙しくて手付かずでしたが、2014年5月26日に再調整を完了しました。

特長は オシロスコープ / ジャイロタッチチューニング / クォーツロック です。

オシロスコープは、チューニング / マルチパス / オーディオ / 外部機器スコープ として使用できます。

本機は 2013年5月15日 にマランツ首都圏サービスセンタで再調整されているとのことです。



早速、程度&動作チェック

  1. 外観

  2. 入手した状態のまま電源 ON してチェック



構成図





カバーを開けてみました

  1. 大量に物量投入された作り

  2. FM フロントエンド

  3. FM IF 部と FM 検波部

  4. FM MPX 部

  5. FM クォーツロック部

  6. AM 部



リペア

  1. 本体とウッドケースを連結する底ネジが欠品している。

  2. オシロスコープのゲインが高過ぎる。



調整

写真の FM/AM 標準信号発生器 Panasonic VP-8175A (以下 SSG)、 FM Stereo 信号発生器 MEGURO MSG-2170、 周波数カウンタ ADVANTEST TR5822 を使って調整します。 10年も経つとコイルやトリマはズレます。

  

  1. 基板名称

    基板名称 機能 搭載スイッチ / ランプ 備考
    P100 FM フロントエンド   AM バリコンを含む
    P200 IF 基板   AM 受信部を含む
    P300 MPX 基板   MUTING 回路を含む
    P800 電源基板    
    P900 オシロスコープ基板    
    PC50 クォーツロック基板    
    PT00 AF 基板 SW - [MONO] [MPX FILTER] [REC] [QUARTZ] タッチセンサ回路を含む
    MUTING リレーを含む
    PR00 オシロスコープ入力切替基板 SW - [SCOPE ON] [EXT] [AUDIO] [TUNING] [MULTIPATH]  
    PS01 バンド切替基板 SW - [AM] [FM] [IF-WIDE]  
    PY01 バンド表示基板 LED - [AM] [FM] [IF-WIDE]  
    PZ01 PL 基板 [8V/0.3A フィラメントランプ]×6本  

  2. 調整ポイント ・・・ 調整箇所が多くて大変です。備考に調整不要と記載した箇所は不具合がなければ触らなくてよいです。

  3. 電源電圧の確認

    [P800] 端子 電圧 使用先 備考
    JB01-1〜2 AC7V オシロスコープ  
    JB01-1〜GND
    JB01-2〜GND
    -650V オシロスコープ  
    JB01-3 +240V オシロスコープ  
    JB01-4 -14V オシロスコープ  
    JB01-5 +14V オシロスコープ  
    JB01-6 GND オシロスコープ  
    JB05
    JB13
    JB22
    GND フロントエンド
    IF
    MPX
    AF
    クォーツロック
     
    JB06
    JB09
    JB25
    +14V フロントエンド
    IF
    MPX
    AF
     
    JB07
    JB08
    +14V IF 差動回路
    MPX オペアンプ
    AF オペアンプ
     
    JB10
    JB11
    -14V IF 差動回路
    MPX オペアンプ
    AF オペアンプ
     
    JB12 +5V クォーツロック
    LED
     
    JB23〜GND AC8V ダイヤルスケール照明  
    JB24 +17.5V AF
    クォーツロック
    リレー電源としてのみ使用

  4. オシロスコープ部の調整

    手順 ST-8 の設定 調整箇所 TP 及び調整値 備考
    1 バンド : FM
    IF-WIDE : ON
    QUATZ LOCK : OFF
    REC LEVEL : OFF
    MPX NOISE FILTER : OFF
    MONO : OFF
    MUTING LEVEL : OFF
    scope display : EXT
    VERT : 中点位置
    HORIZ : 中点位置
    EXT LEVEL : 最小位置
    オシロスコープ基板
    R925 (H. CENTER)
    R926 (V. CENTER)
    オシロスコープ輝点 = 中央 中点調整
    2 REC LEVEL : ON
    scope display : AUDIO
    オシロスコープ基板
    R927 (H. GAIN)
    R928 (V. GAIN)
    オシロスコープ振幅
     V 振幅 = 3
     H 振幅 = 3
     輝線の傾きが45度となる
    ゲイン調整
     L ch = V
     R ch = H
    3 - - 手順1と2を数回繰り返す  
    4 REC LEVEL : OFF
    scope display : EXT と TUNINGを同時に押す
    オシロスコープ基板
    R931 (TUNING BIAS)
    オシロスコープ輝点 = 一番下 TUNING BIAS 調整

  5. FM 受信部の調整

    手順 SSG周波数 SSG出力 ST-8 の設定 調整箇所 TP 及び調整値 備考
    1 - - バンド : FM
    IF-WIDE : ON
    QUATZ LOCK : OFF
    REC LEVEL : OFF
    MPX NOISE FILTER : OFF
    MONO : OFF
    MUTING LEVEL : OFF
    scope display : TUNING
    VERT : 中点位置
    HORIZ : 中点位置
    EXT LEVEL : 最小位置
    - -  
    2 10.7MHz 90dB
    変調 : OFF
    SSG 出力を
    IF 基板 J201 へ入力
    IF 基板
    L213
    IF 基板 J220〜J218 間電圧 = 0V 同調点調整
    3 76MHz 90dB
    変調 : MONO 1kHz
    76MHz 受信 フロントエンド
    L106
    IF 基板 J220〜J218 間電圧 = 0V  
    4 90MHz 90dB
    変調 : MONO 1kHz
    90MHz 受信 フロントエンド
    FM OSC トリマ
    IF 基板 J220〜J218 間電圧 = 0V  
    5 - - - - 手順3と4を数回繰り返す OSC トラッキング調整
    6 76MHz 30dB
    変調 : MONO 1kHz
    76MHz 受信 フロントエンド
    L101
    L102
    L103
    L104
    オシロスコープ S レベル = 最大  
    7 90MHz 30dB
    変調 : MONO 1kHz
    90MHz 受信 フロントエンド
    FM RF トリマ×4
    IF 基板 J212 電圧 = 最大  
    8 - - - - 手順6と7を数回繰り返す RF トラッキング調整
    9 83MHz 30dB
    変調 : MONO 1kHz
    83MHz 受信 フロントエンド
    L105
    オシロスコープ S レベル = 最大 メイン IF 調整
    10 83MHz 30dB
    変調 : MONO 1kHz
    83MHz 受信 IF 基板
    L203
    オシロスコープ S レベル = 最大 サブ IF 調整
    11 83MHz 30dB
    変調 : MONO 1kHz
    83MHz 受信
    IF-WIDE : OFF
    IF 基板
    L202
    オシロスコープ S レベル = 最大 メイン IF narrow 調整
    12 83MHz 90dB
    変調 : MONO 1kHz
    83MHz 受信
    IF-WIDE : ON
    L205 オーディオ出力 = 高調波歪最小  
    13 83MHz 90dB
    変調 : MONO 1kHz
    83MHz 受信 L206 IF 基板 J226 電圧 = 0V  
    14 - - - - 手順12と13を数回繰り返す レシオ検波調整
    15 83MHz 90dB
    Pilot 信号 : OFF
    変調 : OFF
    83MHz 受信 MPX 基板
    R313
    MPX 基板 R314 付近
    TP 周波数 = 76kHz±200Hz
    VCO フリーラン周波数
    周波数カウンタで測定
    16 83MHz 90dB
    Pilot 信号 : ON
    変調 : OFF
    83MHz 受信 MPX 基板
    R302
    オーディオ出力電圧 = 19kHz 成分最小 パイロットキャンセル調整
    17 83MHz 90dB
    Pilot 信号 : ON
    変調 : STEREO 1kHz
    83MHz 受信 フロントエンド
    L105
    オーディオ出力 = 高調波歪最小 wide stereo 高調波歪調整
    ±90度の範囲で調整する
    18 83MHz 90dB
    Pilot 信号 : ON
    変調 : R ch. only 1kHz
    83MHz 受信 MPX 基板
    R369
    L ch. オーディオ出力電圧 = 最小 wide セパレーション調整 (L)
    19 83MHz 90dB
    Pilot 信号 : ON
    変調 : L ch. only 1kHz
    83MHz 受信 MPX 基板
    R366
    R ch. オーディオ出力電圧 = 最小 wide セパレーション調整 (R)
    20 83MHz 90dB
    Pilot 信号 : ON
    変調 : STEREO 1kHz
    83MHz 受信
    IF-WIDE : OFF
    IF 基板
    C294
    オーディオ出力 = 高調波歪最小 narrow stereo 高調波歪調整
    21 83MHz 90dB
    Pilot 信号 : ON
    変調 : R ch. only 1kHz
    83MHz 受信 MPX 基板
    R368
    L ch. オーディオ出力電圧 = 最小 narrow セパレーション調整 (L)
    22 83MHz 90dB
    Pilot 信号 : ON
    変調 : L ch. only 1kHz
    83MHz 受信 MPX 基板
    R367
    R ch. オーディオ出力電圧 = 最小 narrow セパレーション調整 (R)
    23 83MHz 90dB
    Pilot 信号 : ON
    変調 : STEREO 400Hz
    83MHz 受信
    IF-WIDE : ON
    - オーディオ出力 = レベルを記録  
    24 - - REC LEVEL : ON AF 基板
    RT37
    オーディオ出力
     = 手順23のレベルの1/2 (-6dB)
    REC LEVEL 調整
    25 83MHz 60dB
    変調 : MONO 1kHz
    83MHz 受信
    REC LEVEL : OFF
    IF 基板
    RB11
    オシロスコープ S レベル = 3 S メータ調整
    オシロスコープ目盛の一番下を0、一番
    上を6とする。厳密な調整ではない。
    26 83MHz 18dB
    変調 : MONO 1kHz
    83MHz 受信
    MUTING LEVEL : 最小
    IF 基板
    RB10
    オーディオ出力
     = MUTING 解除するギリギリ
    MUTING 調整 (MIN)
    27 83MHz 34dB
    変調 : MONO 1kHz
    83MHz 受信
    MUTING LEVEL : 最大
    IF 基板
    RB47
    オーディオ出力
     = MUTING 解除するギリギリ
    MUTING 調整 (MAX)
    28 83MHz 90dB
    変調 : OFF
    83MHz 受信
    MUTING LEVEL : OFF
    MPX 基板
    R349
    MPX 基板
    Q348-C 電圧 =
     同調時: H レベル (3V 前後)
     ±200kHz 離調時: L レベル (0V)
    MUTING 用同調点検出調整
    ダイヤル指針を
     82.8〜83.2MHz 間で動かして調整
    29 83MHz 90dB
    変調 : 1kHz 100%
    83MHz 受信
    scope display : MULTIPATH
    IF 基板
    RB27
    オシロスコープ水平振幅 = 3 MULTIPATH 調整 (H)
    厳密な調整ではない。

  6. AM 受信部の調整

    手順 SSG周波数 SSG出力 ST-8 の設定 調整箇所 TP 及び調整値 備考
    1 - - バンド : AM
    REC LEVEL : OFF
    scope display : TUNING
    - -  
    2 600kHz 60dB 600kHz 受信 IF 基板
    L152
    オシロスコープ S レベル = 最大  
    3 1400kHz 60dB 1400kHz 受信 フロントエンド
    AM OCS トリマ
    オシロスコープ S レベル = 最大  
    4 - - - - 手順2と3を数回繰り返す OSC トラッキング調整
    5 600kHz 40dB 600kHz 受信 バーアンテナ
    IF 基板 L151
    オシロスコープ S レベル = 最大  
    6 1400kHz 40dB 1400kHz 受信 フロントエンド
    AM RF トリマ×2
    オシロスコープ S レベル = 最大  
    7 - - - - 手順5と6を数回繰り返す RF トラッキング調整
    8 1000kHz 40dB 1000kHz 受信 IF 基板
    L153
    L154
    オシロスコープ S レベル = 最大 IF 調整
    9 1000kHz 60dB 1000kHz 受信 IF 基板
    R152
    オシロスコープ S レベル = 2.5 S メータ調整

  7. 調整結果



使ってみました

  1. 優美な Marantz デザイン

  2. 優秀な機能

  3. 推奨できる高性能マシン



仕様&その他

  1. ST-8 のドキュメントは見つかりませんでしたが、ST-8 と同じと思われる Marantz model 2130 回路図 がありました。

  2. ST-8 の取扱説明書は見つかりませんでしたが model 2130 / Handbook of Instructions がありました。 ほぼ同じなので参考になります。

  3. ST-8 の兄弟

  4. Marantz ST-8 (ESOTEC) - Details

  5. 仕様は以下です。

    FM 受信部  
    受信周波数範囲 76〜90MHz
    実用感度 1.6uV (旧 IHF) / 9.3dBf (新 IHF)
    S/N 比 50dB 感度 mono: 2.8uV / 14.1dBf
    stereo: 28uV / 34.2dBf
    クワイエッティングスロープ 58dB (20dBf)
    64dB (25dBf)
    76dB (40dBf)
    S/N 比 mono: 84dB
    stereo: 80dB
    高調波歪率 mono wide: 0.04%
    mono narrow: 0.07%
    stereo wide: 0.06%
    stereo narrow: 0.08%
    周波数特性 30Hz〜15kHz +0.2dB -1dB
    キャプチャーレシオ wide: 0.8dB
    narrow: 1.2dB
    実効選択度 wide 50dB
    narrow 90dB
    イメージ妨害比 120dB
    IF 妨害比 120dB
    AM 抑圧比 70dB
    ステレオセパレーション 48dB (100Hz)
    55dB (1kHz)
    45dB (10kHz)
    アンテナインピーダンス 75Ω不平衡型 (F 端子)
    300Ω平衡型
    AM 受信部  
    受信周波数範囲 535〜1605kHz
    感度 10uV
    S/N 比 55dB
    選択度 60dB
    イメージ妨害比 80dB
    総合  
    出力レベル/インピーダンス 固定: 0.16V/1kΩ
    可変: 0〜0.32V/1kΩ
    電源電圧 AC100V, 50/60Hz
    定格消費電力 30W
    外形寸法 414(W)×146(H)×302(D)mm
    重量 9kg
    別売キャビネット WC-77 8,000円 (ウォールナット仕上げ)
    WC-77N 12,500円 (マホガニー仕上げ)
    その他  
    発売時期 1978年9月
    定価 135,000円 (当時は消費税なし)