SONY ST-S333ESA (11号機) が到着
2023年6月7日、千葉県船橋市の I さんより
SONY ST-S333ESA
の修理依頼品が到着しました。
程度&動作チェック
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修理依頼者のコメント
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ハードオフのジャンクで入手しました。
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電源は入り、ディスプレイ表示は正常です。
メモリはバックアップされているようです。
スイッチ類は正常に効くようです。
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カバーを開けて中を見てみましたが、特にいじられた様子はなさそうです。
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FM は受信しますが感度が悪く、他のチューナでフル近くメータが振れるアンテナをつなげても4割くらいの表示で雑音の多い状態です。
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同調がズレてチューニングされます。
80.7MHz が 80.6MHz あたりで止まります。
典型的な調整ずれではないかと思います。
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AM はアンテナの付属がなく試していません。
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外観
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製造シリアル番号は [202215] で、電源コードの製造マーキングより [1992年製造品] と判明しました。
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[純正 AM ループアンテナ] は添付されていませんでした。
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右サイドウッドの正面下の化粧板が 6mm ほど欠けています。
目立つので、せめてエナメル補修塗装するとよいかと。
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左サイドウッドの下側で前から1/3の箇所の化粧板が欠けています。
ここは目立たない場所です。
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更に正面側の化粧板が剥がれかけています。
剥がれは今なら修復できます。
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フロントパネルは非常に綺麗です。
リアパネルにキズはなく綺麗です。
RCA 端子に輝きが残っています。
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天板、底板にキズはなく綺麗です。
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総合して外観はかなり良いです。
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よくハードオフにこの状態のものがあったんですね。
修理依頼者の選別眼に感心します。
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サイドウッドの化粧板欠けが無ければ逸品と呼べるのに、これだけが残念です。
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電源 ON にてチェック
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電源は問題なく入りました。
各ボタン操作も問題なく良好です。
ディスプレイの輝度は新品同様です。
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FM 受信
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S メータの振れが少なく感度低下しています。
-0.1MHz の周波数ズレがあります。
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80MHz の放送を 80MHz で受信すると [STEREO] 表示が出ません。
79.9MHz で受信すると [STEREO] 表示が出ます。
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AM 受信
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手持ちの (純正でない) ループアンテナを接続してチェックしました。
感度良好に受信できます。
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カバーを開けてチェック
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内部は綺麗で、基板も綺麗です。
目視でわかる劣化部品は無いようにみえます。
リペア
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S メータの振れが少なく感度低下している
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原因は FM フロントエンド内の [CT103] トリマコンデンサの容量抜けでした。
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[CT101] [CT102] [CT103] を新しいセラミックトリマ 10pF に交換して直りました。
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右の写真で赤〇で囲んだ部品です。
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交換後再調整したら感度が復活しました。
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-0.1MHz の周波数ズレがある
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FM 同調点用の [IFT251] の再調整で直りました。
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同時に、正しい周波数で受信して [STEREO] 表示が点くようになりました。
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[タンタルコンデンサ] の予防交換
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[C603] はタンタルコンデンサで、これもいつまで持つか心配な部品です。
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しかも耐圧が 6.3V しかありません。
ここには 6V 近くの電圧がかかります。
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タンタルコンデンサは耐圧を超えた電圧がかかると簡単に内部短絡します。
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半世紀前に [人気者] だったタンタルコンデンサは、現在では短絡事故が多いことから [嫌われ者] になっています。
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心配なので、[10uF/6.3V タンタル]→[10uF/25V 積層セラミック] に予防交換しました。
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右の写真で赤〇で囲んだ部品です。
タンタルより高性能でやや高価な無極性コンデンサです。
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ハンダクラックの予防補修
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ST-S333ES シリーズでは定番のハンダクラックしやすい箇所があります。
持病みたいなものです。
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目視でチェックしてみると、やはり数箇所のハンダクラックがありました。
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[RCA 端子] [F 端子×2] [AM アンテナ端子] [アースバー×8] を補修ハンダ付けしました。
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左サイドウッドの正面側の化粧板が剥がれかけている
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木工ボンドで再接着して直りました。
補修したことがわからないと思います。
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なお、サイドウッドのネジを強く締め過ぎで、少しサイドウッドが変形しかけていました。
相手は木なので、こんなに強く締めてはいけません。
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交換した部品の記録
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写真は基板に元付いていた故障した部品です。
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茶色の部品は [トリマコンデンサ] で、青色の部品は [タンタルコンデンサ] です。
再調整
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電源電圧チェック (VP)
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実測値は以下のように良好でした。
VP |
標準電圧 |
実測電圧 |
判定 |
備考 |
JW88 |
+30V |
+30.9V |
〇 |
PLL |
JW89 |
+15V |
+14.8V |
〇 |
AUDIO |
JW145 |
-17V |
-17.8V |
〇 |
FL |
JW213 |
+13V |
+13.2V |
〇 |
DIGITAL |
JW220 |
+5.6V |
+5.70V |
〇 |
DIGITAL |
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FM/AM 受信部の調整
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調整結果
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FM 受信部
項目 |
IF BAND |
stereo/mono |
L |
R |
単位 |
ステレオセパレーション (1kHz) |
WIDE |
stereo |
60 |
60 |
dB |
NARROW |
37 |
35 |
dB |
高調波歪率 (1kHz) |
WIDE |
mono |
0.010 |
% |
stereo |
0.010 |
% |
NARROW |
mono |
0.21 |
% |
stereo |
0.21 |
% |
パイロット信号キャリアリーク |
WIDE |
stereo |
-73 |
-73 |
dB |
オーディオ出力レベル偏差 |
WIDE |
mono |
0 |
0 |
dB |
CAL TONE 信号 |
WIDE |
mono |
398.4 |
Hz |
-5.7 |
dB |
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AM 受信部
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[純正 AM ループアンテナ] の添付がなかったので、IF 部の調整だけしました。
使ってみました
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今回の修理の感想
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全体的には状態が良かったので修理はすごく順調でした。
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全体的にゴールド基調のデザイン
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フロントパネルはアルミ材で、ヘアライン仕上げです。
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サイドウッドは鏡面仕上げでラウンド加工されています。
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FM 受信
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感度も S/N も一級品です。
微弱電波もしっかり捉えます。
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解像度がある素晴らしい音。
現代の安物チューナーとは全く異次元の音です。
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AM 受信
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感度は良いです。
ループアンテナでしっかり入感します。