SONY ST-S333ESA (3号機) が到着
2022年3月26日、宮城県名取市の S さんより
SONY ST-S333ESA
の修理依頼品が送られてきました。
写真は修理完了後です。
到着した状態のまま、状態チェック
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依頼者のコメント
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1ヵ月程前からシグナルの振れ方が弱く気になっていましたが、数日前に突然 FM の受信が出来なくなりました。
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FUSE 抵抗に断線は確認出来ませんでしたが、何本かの抵抗に 20〜50% アップの抵抗値が確認出来ました。
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各電源電圧はほぼ正常と思われます。
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外観
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キズはほんの僅かで気にならず、全体にかなり綺麗な逸品です。
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製造シリアル番号は [200990] です。
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電源 ON にて確認
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電源は問題なく入り、ディスプレイの輝度は新品同様です。
各ボタンやノブの操作は正常です。
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FM は全く受信せず、S メータが振れず、局間ノイズも出ません。
完全に故障しています。
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AM は問題なく受信でき、S メータも振れます。
感度と音が良いです。
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カバーを開けて内部をチェック
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内部に薄っすらと綿ボコリが溜まっていました。
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内部をいじった形跡があります。
C605 が [0.1F/5.5V]→[0.22F/5.5V] に交換されていました。
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使用 IC のロット番号より、この ST-S333ESA は1991年製と判明しました。
電源ケーブルの製造マーキングも1991年でした。
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その他
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[AM ループアンテナ] が添付されなかったので、AM は完全調整できません。
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AM は一般的な調整だけにします。
リペア
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電源電圧チェック
VP |
表示電圧 |
標準電圧 |
実測電圧 |
判定 |
備考 |
JW88 |
+30V |
+30.9V |
+28.8V |
〇 |
PLL |
JW89 |
+15V |
+16.3V |
+15.0V |
〇 |
AUDIO |
JW145 |
-17V |
-17.5V |
-17.4V |
〇 |
FL |
JW213 |
+13V |
+13.6V |
+13.3V |
〇 |
DIGITAL |
JW220 |
+5V |
+5.6V |
+5.6V |
〇 |
DIGITAL |
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FUSE 抵抗のチェック
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許容範囲を±20%として、判定が×の抵抗を交換しました。
下の写真が劣化した抵抗です。
回路 |
部品番号 |
標準値 (Ω) |
実測値 (Ω) |
判定 |
対策 |
FM FRONT END |
R119 |
100 |
109 |
〇 |
|
WOIS |
R203 |
10 |
9.9 |
〇 |
|
R207 |
10 |
10.1 |
〇 |
|
R211 |
10 |
10.0 |
〇 |
|
R227 |
10 |
10.1 |
〇 |
|
IF |
R259 |
100 |
116 |
〇 |
|
DET |
R274 |
10 |
10.2 |
〇 |
|
R279 |
220 |
178 |
〇 |
|
R292 |
100 |
118 |
〇 |
|
MPX |
R301 |
10 |
10.5 |
〇 |
|
R327 |
47 |
53.6 |
〇 |
|
AM |
R403 |
220 |
340 |
× |
220Ωに交換 |
R410 |
150 |
188 |
× |
150Ωに交換 |
PLL |
R511 |
220 |
240 |
〇 |
|
R516 |
180 |
257 |
× |
180Ωに交換 |
CONTROL |
R626 |
47 |
55.6 |
〇 |
|
POWER SUPPLY |
R910 |
22 |
25.8 |
〇 |
|
R921 |
220 |
275 |
× |
220Ωに交換 |
R931 |
180 |
229 |
〇 |
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FM が全く受信できない ・・・ トラブルシューティングと対策
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VT 電圧は正常に変化しました。
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[FM フロントエンド]→[IF 増幅]→[LA1235] と順にオシロスコープで波形を観測しました。
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LA1235 の入力までは波形が正常でした。
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なのに、LA1235 の出力が出ていない。
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こうなると、LA1235 故障の可能性が高いです。
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IC251 LA1235 を ICソケット化してから交換しました。
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結果、正常に FM を stereo で受信するようになりました。
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原因は間違いなく、右の写真の LA1235 の故障です。
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基板へのダメージを最小限にするため、故障 LA1235 はリードを切断してから取り除きました。
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参考ですが、IC にプリントされている [1H2] の最初の [1] が1991年製造ロットを示します。
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FM の再調整を開始したところ、FM フロントエンドの CT103 トリマコンデンサの調整が決まらない
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CT103 を最適位置に合わしても [しばらくするとズレる] [振動を与えるとズレる] のです。
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これは CT103 の劣化です。
CT101, CT102 と合わせて3個のトリマコンデンサを一斉交換して直りました。
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右の写真は不良だったトリマコンデンサです。
経験上、このタイプのトリマコンデンサの劣化は多いです。
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高信頼の [murata セラミック型トリマコンデンサ 10PF] と交換しました。
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再調整
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ST-S333ESA (1号機)
に記載の調整手順にて再調整しました。
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再調整後は特に問題はなく、良い数値です。
ステレオ時の高調波歪率は 0.015% (WIDE 1kHz) でした。
項目 |
IF BAND |
L |
R |
単位 |
ステレオセパレーション (1kHz) |
WIDE |
62 |
72 |
dB |
NARROW |
53 |
63 |
dB |
パイロット信号キャリアリーク |
WIDE |
-71 |
-75 |
dB |
オーディオ出力レベル偏差 (mono) |
0 |
+0.24 |
dB |
CAL TONE 信号 |
398.4 |
Hz |
-5.7 |
-5.7 |
dB |
使ってみました
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全体的にゴールド基調のデザイン
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フロントパネルはアルミ材で、ヘアライン仕上げです。
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サイドウッドは鏡面仕上げでラウンド加工されています。
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FM 受信
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感度も S/N も一級品です。
微弱電波もしっかり捉えます。
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解像度がある素晴らしい音。
現代の安物チューナーとは全く異次元の音です。
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AM 受信
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感度は良いです。
ループアンテナでしっかり入感します。