SONY ST-J75 (3号機)

SONY ST-J75 (3号機) が到着

2023年3月26日、東京都多摩市の F さんより SONY ST-J75 の修理依頼品が到着しました。



程度&動作チェック

  1. 修理依頼者のコメント

  2. ヤフオク出品者のコメントは矛盾しています

  3. 外観

  4. 電源 ON してチェック

  5. カバーを開けてチェック



リペア

  1. ほぼ全てのランプが薄く点滅して、動作モードが把握できない

    1. 電源電圧が正常かチェック

      • 以下のように全て正常で、この要因ではありませんでした。

        VP 標準値 実測値 判定
        Q601-E +15V +15.0V
        Q604-E -5V -5.16
        Q605-E +5V +5.09V
        Q606-E +5V +5.07V
        Q607-E -30V -31,3V
        Q608-E +30V +31,2V

    2. FUSE 抵抗が正常かチェック

      • 安全面で FUSE 抵抗が使われているのですが、経年劣化しやすい欠点があります。

      • チェックの結果、以下のように正常範囲でした。 この要因ではありませんでした。

        セクション 部品番号 抵抗値 (Ω) 実測値 (Ω) 判定
        FE R104 39 36.0
        DISCRI R128 120 121
        R129 10 10.2
        MPX R208 100 99.4
        R209 100 99.7
        R217 120 120
        MUT R229 100 101
        AUDIO R233 100 101
        R234 39 39.4
        AM R317 100 100
        R318 100 100
        PS R607 10 10.2
        R610 10 10.2
        R613 10 10.2
        R617 10 10.5

    3. タンタルコンデンサで内部短絡が発生していないかチェック

      • 半世紀前はタンタルコンデンサは特性の良いコンデンサと信じられており、高価なでした。

      • ところが最近になって内部短絡しやすい欠点が発覚し、現在では使用されません。 使用禁止しているメーカも多いです。

      • チェックの結果、内部短絡はありませんでした。 この要因ではありませんでした。

        セクション 部品番号 定数 判定
        MPX C208 0.33uF/35V
        C209 3.3uF/35V
        C210 3.3uF/35V
        C211 0.47uF/35V
        C218 0.33uF/35V
        PLL C401 0.1uF/35V
        C402 0.68uF/35V
        MUT C707 6.8uF/20V

    4. 足が黒くなっている IC の足を洗浄してみました。

      • 黒くなっているのはマイグレーションと呼ばれる金属カビのようなもので、IC のピン間を短絡して誤動作させます。

      • IC を取り外さないで、基板上からエレクトロニッククリーナと歯ブラシを使って洗浄しました。

        • IC を1個ずつ順に洗浄していき、1個洗浄するごとに電源 ON して動作が変わったか確認しながら行いました。

        • IC504 (TMS1024NLL) を洗浄したところで、 動作が正常になりました!

        • 右の写真の中央に写っている IC です。

      • 原因は IC504 (TMS1024NLL) のマイグレーションによるピン間短絡でした。

        • この IC は拡張 IO ポートで、各種表示と操作ボタンの取り込みに使っています。

        • [表示が薄く点滅] [操作ボタンが反応しにくい] 現象と辻褄が合います。

        • マイグレーションが原因で間違いないです。

        • IC501 交換がベストですが、この IC は既に製造しておらず、入手困難です。

    5. やっと操作系は直りました!

      • IC504 の洗浄は基板の表面からしかやっていない訳で、足の裏側は洗浄できていないです。 再発しないことを祈ります。

  2. 操作できるようになったので、あらためて動作チェックすると以下の状況が確認できました。

  3. FM の感度が大きく低下している

  4. FM 受信音に時々バリバリという雑音が入る

    1. 一番怪しいと思われた [LPF201] を取り外して内蔵チタコンをチェックしました。

      • [LPF201] はアンチバーディフィルタで、検波〜MPX の間に入っています。 内蔵チタコンは綺麗で問題ありませんでした。

      • [LPF201] を取り外した状態では無音になりますが、この無音状態で時々バリバリ雑音が出ます。 [LPF201] は完全に無罪です

    2. LPF201〜MPX の間には [4066B] というアナログスイッチ IC が入っています。

      • 右の写真のように、[4066B] を IC ソケット化してから交換してみました。

      • 見事! バリバリ雑音は解消しました。 この IC の故障が原因でした。

  5. AM 受信できない

    1. AM は [LA1245] という IC で受信回路を構成します。

      • VT 電圧を測定してみると、どの周波数でも +30V くらいです。

      • これは OSC 発振していないことを意味します。

    2. 右の写真のように、[LA1245] を IC ソケット化してから交換してみました。

      • 周波数と共に VT 電圧が変化するようになりました。

      • [LA1245] が故障していたのです。 交換は正解です。

      • しかし、この対策でも AM 受信できませんでした。 他にも要因があるようです。

    3. こうなるとオシロスコープの出番です。

      • SSG より AM アンテナ端子に電波を注入して [LA1245] の各 pin の波形を追いました。

      • [IF] 出力 (10pin) までは正常で、[DET] 入力 (11pin) では波形が消えています。

      • [IF]→[IFT303]→[DET] と信号が流れるので、[IFT303] が怪しいです。

      • 左の写真の中央にある黒いコアの部品が [IFT303] です。 右の写真は基板から取り外して裏側を見たものです。

        • 裏側で竹輪のような部品がチタコンで、マイグレーションで真っ黒になっています。 故障しています。

         

      • チタコンを外して抵抗計で測ると100Ω程度でした。 コンデンサですから無限大が正しいです。 抵抗に変身したようです。

      • もうこのチタコンは使えないので、チタコンを外した状態で [IFT303] を基板に戻しました。

      • チタコンの代わりにセラミックコンデンサを基板裏側に取り付けました。

      • チタコンは 180pF ですが、こんな中途半端なコンデンサはないので 100pF×2個 をパラにして 200pF としました。

      • 180pF → 200pF と容量が変わったのですが、10% くらいなのでコアの調整でなんとかなります。

         

    4. コンデンサ交換後、AM 受信チェックしました。

      • 見事! 直りました。 AM できるようになりました。

  6. ここまでの修理でヤフオク出品者のコメントはウソっぽいと思いました

  7. 予防交換と音質改善交換のためのコンデンサ交換

  8. フロントパネルにあるボタンに薄いサビが出ている



再調整

  1. FM/AM 受信部の調整

  2. 調整結果



使ってみました

  1. 素晴らしいデザイン

  2. 感度と音質