SONY ST-515

SONY ST-515 が到着

2023年4月23日、埼玉県入間市の N さんより SONY ST-515 の修理依頼品が到着しました。 この写真は照明完全 LED 化後です。

FM-AM PROGRAM TUNER で、バリコン式なのに デジタル周波数表示 があって PLL クリスタルロック方式 です。

FM/AM とも5局ずつプリセットでき、 手動で指針をプリセット位置まで動かす という風変わりな機種です。



程度&動作チェック

  1. 修理依頼者のコメント

  2. 外観

  3. 電源 ON してチェック

  4. カバーを開けてチェック



カバーを開けてみました

  1. 内部は少しゴチャゴチャしています。 写真をクリックすると拡大写真を表示できます。

  2. FM フロントエンド

  3. FM IF 部

  4. FM 検波部

  5. FM MPX 部

  6. AM 受信部



リペア (その1):照明 LED 化 ・・・ 修理依頼者のリクエスト

  1. [FM] [AM] [LOCKED] ランプの LED 化

  2. [STEREO] [PROGRAM SENSOR] ランプの LED 化

  3. ダイヤル照明ランプの LED 化

  4. 完全 LED 化完成!



リペア (その2):電解コンデンサ交換 ・・・ 修理依頼者のリクエスト

  1. 交換の方針

  2. 交換リスト

    パート 部品番号 交換前 交換後 備考
    電源部 C532 1uF/50V (85℃) 1uF/50V (FG) オーディオクラスに交換
    C611 100uF/10V (85℃) 100uF/16V (105℃) 105℃クラスに交換
    C805 220uF/35V (85℃) 470uF/35V (105℃) 容量アップ
    105℃クラスに交換
    C806 1000uF/25V (85℃) 2200uF/35V (105℃)
    C807 1000uF/10V (85℃) 1000uF/10V (105℃) 105℃クラスに交換
    C808 100uF/50V (85℃) 100uF/50V (105℃)
    C809 10uF/50V (85℃) 10uF/50V (105℃)
    C810 10uF/16V (85℃) 10uF/16V (105℃)
    C811 1uF/50V (85℃) 1uF/50V (FG) オーディオクラスに交換
    オーディオ部 C232 10uF/16V (85℃) 10uF/25V (MUSE) (BP) オーディオクラスに交換
    C301 4.7uF/25V (85℃) 4.7uF/50V (MUSE) (BP)
    C302 4.7uF/25V (85℃) 4.7uF/50V (MUSE) (BP)
    C304 0.47uF/50V (85℃) 0.47uF/50V (MUSE) (BP)
    C305 47uF/16V (85℃) 47uF/16V (105℃) 105℃クラスに交換
    C306 0.47uF/50V (85℃) 0.47uF/50V (MUSE) (BP) オーディオクラスに交換
    C307 4.7uF/25V (85℃) 4.7uF/50V (MUSE) (BP)
    C311 1uF/50V (85℃) 10uF/25V (MUSE) (BP) 容量アップ
    オーディオクラスに交換
    C312 1uF/50V (85℃) 10uF/25V (MUSE) (BP)
    C313 22uF/16V (85℃) 22uF/25V (MUSE) (BP) オーディオクラスに交換
    C314 0.47uF/50V (85℃) 0.47uF/50V (MUSE) (BP)

  3. 電解コンデンサ交換後の記録写真



リペア (その3):PROGRAM SENSOR モード故障

  1. 原因はプリセットマーカを検出するフォトインタラプタ [IC401] [IC402] の故障でした

  2. 代替フォトインタラプタはあるのだろうか?

  3. 苦肉の策

  4. フォトインタラプタの手作り

  5. PROGRAM SENSOR モードは通常の同調モードと何が違うのだろう?



リペア (その4):バリコン機構のプーリー軸が外れかかっている

  1. [側板]〜[プーリー] の間に [特注アクリル板] を挿入して脱落防止します

  2. [側板]〜[プーリー] の隙間を測定すると 2.65mm でした

  3. 対策完了しました



リペア (その5):フロントパネルの透明アクリル板の左右にある飾りパーツの上側がグラグラしている



リペア (その6):FM 放送を聴いていると音量が突然下がることがある

  1. 原因は [QQ201] トランジスタ故障と思われます

  2. [Q201] を [2SC945]→[2SC1815-GR] に交換しました



リペア (その7):ハンダクラック対策



調整

写真の FM/AM 標準信号発生器 Panasonic VP-8175A (以下 SSG)、 FM Stereo 信号発生器 MEGURO MSG-2170、 周波数カウンタ ADVANTEST TR5822 を使って調整します。 10年も経つとコイルやトリマはズレます。

  

  1. 電圧チェックポイント (VP)

  2. FM 受信部の調整

    手順 SSG出力 ST-515 の設定 調整箇所 TP 及び調整値 備考
    1 - FUCTION : FM
    MUTING : OFF
    MODE : STEREO
    PROGRAM SENSOR : OFF
    -  
    2 L105 を指で覆うようにつまむ (OSC が発振停止する) PLL 基準 OSC 調整
    3 - - CT502 デジタル周波数表示 = 101.20MHz
    (10.7MHz+18.1MHz×5)
    4 L105 から指を離す (OSC が発振再開する)
    5 - - L505
    L506
    L507
    Q501-E = 18.100MHz 成分最大
    オシロスコープで観測
    6 - 76MHz 受信 L105 TP1 電圧 = 3.0±0.1V OSC トラッキング調整
    7 - 90MHz 受信 CT101 TP1 電圧 = 22.0±0.1V
    8 手順6〜7を数回繰り返す
    9 - 指針を
    76MHz 以下
    L106 デジタル周波数表示 = 76MHz OSC buffer 調整
    10 - 指針を
    90MHz 以上
    CT102 デジタル周波数表示 = 90MHz
    11 手順9〜10を数回繰り返す
    12 78MHz
    30dB
    無変調
    78MHz 受信 RF コイル×3 R227右 電圧 = 最大 RF トラッキング調整
    13 88MHz
    30dB
    無変調
    88MHz 受信 RF トリマ×3
    14 手順12〜13を数回繰り返す
    15 83MHz
    30dB
    無変調
    83MHz 受信 T101 R227右 電圧 = 最大 IF 調整
    16 83MHz
    90dB
    mono 1KHz
    IFT201 黒コア オーディオ出力 = 高調波歪最小 QR 検波調整
    17 IFT201 青コア [R207 近くの TP]〜[R215 前]
    間電圧 = 0±10mV
    18 手順16〜17を数回繰り返す
    19 83MHz
    90dB
    stereo 1kHz L+R
    83MHz 受信 RT302 下の [VCO 調整手順] を参照 VCO 調整
    20 T101 オーディオ出力 = 高調波歪最小 IF 歪補正
    21 83MHz
    90dB
    stereo 1kHz R/L
    RV301 L/R ch. オーディオ出力電圧 = 最小 セパレーション調整

  3. AM 受信部の調整

    手順 SSG出力 ST-515 の設定 調整箇所 TP 及び調整値 備考
    1 - FUNCTION : AM
    MUTING : OFF
    - -  
    2 - ダイヤル指針を
    600kHz に合わせる
    T102 デジタル表示 = 600kHz OSC トラッキング調整
    3 - ダイヤル指針を
    1400kHz に合わせる
    OSC トリマ デジタル表示 = 1400kHz
    4 手順2〜3を数回繰り返す
    5 600kHz
    40dB
    無変調
    600kHz 受信 L202 R227右 電圧 = 最大 RF トラッキング調整
    6 1400kHz
    40dB
    無変調
    1400kHz 受信 RF トリマ
    7 手順5〜6を数回繰り返す
    8 1000kHz
    40dB
    無変調
    1000kHz 受信 T202 R227右 電圧 = 最大 IF 調整

  4. 調整結果



使ってみました

  1. セットコンポのチューナにしては良好なデザイン

  2. PROGRAM SENSOR 機能

  3. 端子類

  4. 受信性能&音質



仕様ほか

  1. ドキュメント

  2. 仕様

    FM 受信部
    受信周波数範囲 76〜90MHz (0.1MHz step)
    アンテナインピーダンス 75Ω不平衡型
    300Ω平衡型
    IF 周波数 10.7MHz
    46dB クワイティング感度 mono : 4.0uV
    stereo : 50uV
    実用感度 1.7uV (S/N=26dB)
    1.9uV / 10.7dBf (IHF)
    S/N 比 mono : 75dB
    stereo : 70dB
    高調波歪率 mono : 0.15% (100Hz), 0.15% (1kHz), 0.2% (10kHz)
    stereo : 0.25% (100Hz), 0.25% (1kHz), 0.5% (10kHz)
    ステレオセパレーション 35dB (100Hz), 45dB (1kHz), 40dB (10kHz)
    周波数特性 30Hz〜15kHz +0.5dB -2.0dB
    40Hz〜12.5kHz +0.5dB -1.0dB
    選択度 40dB (300kHz) / 60dB (400kHz)
    キャプチャレシオ 1.0dB
    AM 抑圧比 54dB
    イメージ妨害比 80dB
    IF 妨害比 100dB
    スプリアス妨害比 90dB
    RF 相互変調 60dB
    出力レベル / インピーダンス 450mV / 6.8kΩ (1kHz, 100%)
    AM 受信部
    受信周波数範囲 530〜1605kHz (1kHz step)
    アンテナ バーアンテナ
    ワイヤアンテナ
    IF 周波数 455kHz
    実用感度 100uV (外部アンテナ, 1,000kHz)
    S/N 比 52dB (5mV)
    高調波歪率 0.3% (5mV, 400Hz)
    選択度 28dB (9kHz)
    30dB (10kHz)
    総合
    電源電圧 AC100V, 50/60Hz
    定格消費電力 20W
    外形寸法 410(W)×145(H)×260(D)mm
    重量 5.7kg
    その他
    発売時期 1978年 (推定)
    定価 (不明)