Pioneer EXCLUSIVE F3 (3号機)

Pioneer EXCLUSIVE F3 (3号機) が到着

2022年6月26日、東京都八王子市の A さんより Pioneer EXCLUSIVE F3 の修理＆再調整依頼品が到着しました。 左の写真は照明を LED 化した後です。

25万円もする超高級 FM 専用チューナ です。

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程度＆動作チェック

1. 修理依頼者からのコメント
   
   
   • ヤフオクで落札した個体で、F3 らしい良い音が確認できました。
     
     
   • 周波数ダイヤルが 0.2〜0.3MHz くらい低い側にズレています。
     
     
   • FIXED 出力端子が交換されているようで、ケーブルを抜いたら外れてしまいました。
     
     
   • 修理＆再調整と照明 LED 化をお願いします。
     
     
2. 外観
   
   
   • 製造シリアル番号は [WC1000680] です。
     
     
   • 全体的には綺麗な逸品です。 致命的なキズやワレは全くありません。
     
     
   • フロントパネルを正面から眺めた状態は綺麗です。
     
     
   • フロントパネルの透明ガラス板には結構手垢のような汚れがありますが、クリーニングで綺麗になりそうです。
     
     
   • [POWER] スイッチの動きがか少し悪く、戻る時にジワ〜と動く感じです。
     
     
   • チューニングノブの動きは高級機らしい重みがあってスムーズです。
     
     
   • リアパネルの端子類に少しサビが出ています。
     
     
   • RCA 端子は赤錆でないので、まだマシです。 アンテナ端子には少し赤錆が出ています。
     
     
   • OUTPUT 端子の FIXED 側の RCA 端子が外れたとのことですが、VARIABLE 側の端子もグラグラしています。
     
     
   • 天板カバーと底板は奇跡的な綺麗さです。
     
     
3. 電源 ON してチェック
   
   
   • 問題なく電源が入り、FM 受信で [STEREO] ランプも点灯します。 各スイッチやノブも正しく動作するようです。
     
     
   • 照明ランプ切れはないです。
     
     
   • [LOCK IN] ランプの点灯時期がおかしいです。
     
     
     • 点灯範囲が広過ぎて、まだクリスタルロックできていなくても点灯します。 当然、この時は音が出ません。
       
       
4. カバーを開けてチェック
   
   
   • 使っている IC のロット番号から1976年製造品と判明しました。
     
     
   • 内部に少し埃がありますが、まずまず綺麗です。
     
     

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リペア

1. [OUTPUT] の FIXED 側端子が壊れている
   
   
   • 以下の写真のように、高級 RCA 端子と交換しました。 VARIABLE 側端子もグラグラだったので、一緒に交換しました。
     
     
   • 寸法的にギリギリだったので、白い絶縁リングを少しだけ加工しました。
     
     
   • 交換して正解です。 オーディオコードの抜き差しに高級で贅沢な挿入感が出るようになりました。
     
     　
     
     
2. 照明 LED 化 (修理依頼者のリクエスト)
   
   
   • Pioneer EXCLUSIVE F3 (2号機) の LED 化と同様の作業を実施しました。 回路は以下です。
     
     
     • バイポーラ電解コンデンサとダイオードを予防交換しました。 [PS Board] の [4.7uF/35V (BP)] [1N4148] です。
       
       
     • [1N4148] のカソード側は、以前 AC8V 側と接続されていましたが、AC9Vx2 側に接続変更しました。
       
       
     
     
     
   • 色目は変わりましたが、現代的な清々しい良好な表示に変わりました。
     
     
   • ついでに、煤のような汚れがあったガラスを中性洗剤で水洗クリーニングしました。 更にクッキリ表示になりました。
     
     
   • 一番前面にあるガラスは外し方がわからないので、できる範囲での通常クリーニングしました。
     
     
   • フィラメント球の時は照明だけで 8.4W も消費していましたが、 1W 以下になりエコになりました！！！
     
     
     
     
3. [POWER] スイッチの動き (戻り) が少し悪い
   
   
   • エレクトロニッククリーナ で清掃したら直りました。
     
     
   • その他のスイッチにも接触劣化が見られたので、エレクトロニッククリーナで接点清掃しました。
     
     
4. [LOCK IN] ランプの点灯時期がおかしい
   
   
   • APC が出力する AFC 電圧がニュートラルで +12.8V となっていました。 標準値は +7.2V です。
     
     
   • この電圧は、+13V 以上になれないので、高い電圧でロックできなかったのです。
     
     
   • 別項の再調整で直りました。
     
     
5. バリコン軸の接触回復
   
   
   • 本機は46年物ビンテージ (2022年現在) です。 バリコン軸の接触回復は必須です。 以下のようにしました。
     
     
     1. エレクトロニッククリーナ を軸受けに噴射し何度もバリコン羽を動かすと緑青サビが湧き出てきます。
        
        
     2. 湧き出た緑青サビを爪楊枝で丹念に落とします。
        
        
     3. [1] と [2] を何度も何度も繰り返します。
        
        
     4. 仕上げに、軸受けに コンタクトグリース を塗布して防錆処置します。
        
        
   • 結構手間がかかりましたが、以上で回復しました。 バリコン軸は綺麗になりました。
     
     

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再調整

1. 電圧チェック (VP)
   
   
   • 以下のように正常です。
     
     

     VP	標準電圧	実測電圧	判定	備考
     T22	+13V	+12.8V	〇	FE, APC, IF, DET, MPX
     T17	-13V	-12.6V	〇	APC, DET, MPX
     T14	+5V	+4.92V	〇	APC, MPX

     
     
2. Pioneer EXCLUSIVE F3 (1号機) に記載の調整手順で再調整しました
   
   
   • 製造から46年も経っているので、あちこちズレがありました。 再調整でズレは精度内に入りました。
     
     
   • FM ステレオセパレーションなどは以下となりました。 良好な数値です。
     
     
     • FIXED 端子での測定結果です。
       
       
     • stereo 1kHz で高調波歪率は [WIDE：0.035%] [NARROW：0.39%] でした。 NARROW は緊急時用なのでしょう。
       
       

     項目	IF	L	R	単位
     ステレオセパレーション (1kHz)	WIDE	53	52	dB
     	NARROW	52	51	dB
     パイロット信号キャリアリーク	WIDE	-52	-49	dB
     オーディオ出力レベル偏差 (MONO)		0	-0.43	dB

     
     
3. ダイヤル指針のトラッキング
   
   
   • 以下のように、±0.06MHz (±60kHz) 以内に収まりました。 十分な精度と思います。
     
     

     SSG 周波数 (MHz)	76.00	77.00	78.00	79.00	80.00	81.00	82.00	83.00	84.00	85.00	86.00	87.00	88.00	89.00	90.00
     ダイヤル指針 (MHz)	75.95	76.95	77.96	78.96	79.97	81.00	82.00	83.03	84.04	85.05	86.05	87.05	88.06	89.05	90.04

     
     

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使ってみました

1. 豪華そのもの の作りに惚れ惚れ
   
   
   • フロントパネルの アルミ厚 6.5mm もあってリッチです。
     
     
   • ノブやスイッチは全てメタル製で高級感が溢れています。
     
     
   • チューニングノブは 削り出しの無垢アルミ
     
     
   • チューニングノブの受け (ノブの周りの黒っぽいリング) もアルミ製です。
     
     
   • ダイヤル指針やダイヤル目盛は美しい仕上げです。
     
     
2. 音質
   
   
   • 重厚感のある音が出ます。 重低音が出ています。
     
     
   • 中高音はメリハリがあって澄み切っていると感じられます。
     
     
   • 音全体に躍動感があって素晴らしいです。 聴き惚れてしまいます。 本当の意味で良い音です。
     
     

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