NEC AUT-8300D

NEC AUT-8300D が到着

2022年9月10日、埼玉県入間市の N さんから NEC AUT-8300D の修理依頼品が到着しました。

1979年 GOOD DESIGN AWARD 受賞 チューナです。

中古市場にほとんど出てこない珍品ですが、どんなのだろうと、触るのを楽しみにしていました。



程度&動作チェック

  1. 修理依頼者のコメント

  2. 外観

  3. 電源 ON してチェック

  4. カバーを開けてチェック



カバーを開けてみました

  1. 基板の作りは良いです。 写真をクリックすると拡大写真を表示できます。

  2. FM フロントエンド

  3. FM IF 部

  4. FM 検波部

  5. FM MPX 部

  6. AM 受信部



リペア

  1. T メータが動作しない

  2. 裏面の配線がバラけている

  3. チューニングノブの取り付け角度が悪い

  4. フロントパネル上部を内部で固定するネジが不適合品に交換されている

  5. 電源部の電解コンデンサ交換 ・・・ 修理依頼者からのリクエスト

  6. バリコン軸の接触回復

  7. 半田クラック対策 ・・・ 修理依頼者のリクエスト



調整

写真の FM/AM 標準信号発生器 Panasonic VP-8175A (以下 SSG)、 FM Stereo 信号発生器 MEGURO MSG-2170、 周波数カウンタ ADVANTEST TR5822 を使って調整します。 10年も経つとコイルやトリマはズレます。

  

  1. 調整ポイント



    FM/AM 基板 機能 種別 調整ポイント 調整内容
    FM フロントエンド フロントエンド TC TC1
    TC2
    TC3
    RF トラッキング
    TC6 OSC トラッキング
    IFT T1 IF
    IF 基板 IF IFT T101 (A) 同調点
    T101 (B) mono 歪補正
    VR VR101 MUTING LEVEL
    MPX VR VR102 VCO
    VR103 PILOT CANCELL
    VR104 SEPARATION
    AM IF 基板 フロントエンド L バーアンテナ RF トラッキング
    TC TC4
    L L109 OSC トラッキング
    TC TC3
    IF IFT T102
    T103
    IF

  2. テストポイント (TP)

    TP 接続先 内容 備考
    TP1 [TP1]〜GND FM 検波出力 HA11225-6pin
    TP2 [TP2]〜GND FM S メータ HA11225-13pin
    TP3 [TP3]〜GND AM 検波出力  
    TP4 [TP4]〜GND FM MPX VCO 76kHz
    R119 [R119] の両端 FM 同調点 0±1mV

  3. 電源電圧チェッックポイント (VP)

    VP 標準値 実測値 判定 備考
    [電源基板] 端子15 +5V +4.97V IC301-OUT
    [電源基板] 端子18 -13V -13.2V TR304-E
    [電源基板] 端子21 +13V +13.1V TR303-E
    [電源基板] 端子22 +12.5V +12.6V TR301-E

  4. FM 受信部の調整

    手順 SSG出力 AUT-8300D の設定 調整箇所 TP 及び調整値 備考
    1 - FM MODE : STEREO
    MPX FIL : OFF
    MUTING : ON
    FUNCTION : FM
    - -  
    2 83MHz
    25dB 前後
    mono 1kHz
    83MHz 付近で受信 - オシロスコープで
    オーディオ出力波形を観測し、
    サイン波ピーク上下のノイズ成分が
    同じレベルになるよう指針を合わせる
    同調点(仮)調整
    3 83MHz
    90dB
    mono 1kHz
    T101 (A) チューングノブに手を触れながら
    [R119] 両端電圧 = 0±1mV
    4 指針を 83MHz に
    合わせる
    TC6 チューングノブに手を触れながら
    デジタル周波数表示 = 83.0MHz
    OSC トラッキング調整
    ダイヤルと指針を合わせる
    のが目的
    5 83MHz
    40dB
    mono 1kHz
    83MHz 受信 TC1
    TC2
    TC3
    [TP2] 電圧 = 最大 RF トラッキング調整
    6 T1 IF 調整
    7 83MHz
    10dB
    mono 1kHz
    VR101 MUTING = ON/OFF 閾 MUTING レベル調整
    8 83MHz
    90dB
    mono 1kHz
    T101 (B) チューングノブに手を触れながら
    オーディオ出力 = 高調波歪率最小
    検波調整
    9 T101 (A) チューングノブに手を触れながら
    [R119] 両端電圧 = 0±1mV
    10 手順8と9を数回繰り返す
    11 83MHz
    90dB
    stereo 1kHz L+R
    83MHz 受信 VR102 以下の [VCO 調整手順] を参照 VCO 調整
    12 VR103 オーディオ出力 = 19kHz 成分最小 パイロットキャンセル調整
    13 T1 オーディオ出力 = 高調波歪率最小 IF 歪補正 (stereo)
    14 83MHz
    90dB
    stereo 1kHz R/L
    VR104 L/R ch. オーディオ出力 = 最小 セパレーション調整

  5. AM 受信部の調整

    手順 SSG出力 AUT-8300D の設定 調整箇所 TP 及び調整値 備考
    1 - MUTING : ON
    FUNCTION : AM
    - -  
    2 600kHz
    30dB
    1kHz
    指針を 600kHz に
    合わせる
    L109 オーディオ出力 = 最大 OSC トラッキング調整
    ダイヤルと指針を合わせる
    のが目的
    3 1400kHz
    30dB
    1kHz
    指針を 1400kHz に
    合わせる
    TC3
    4 手順2と3を数回繰り返す
    5 600kHz
    30dB
    1kHz
    600kHz 受信 バーアンテナ オーディオ出力 = 最大 RF トラッキング調整
    6 1400kHz
    30dB
    1kHz
    1400kHz 受信 TC4
    7 手順5と6を数回繰り返す
    8 1000kHz
    30dB
    1kHz
    1000kHz 受信 T102
    T103
    オーディオ出力 = 最大 IF 調整

  6. 調整結果



使ってみました

  1. デザイン

  2. リアパネル

  3. 感度や音質



仕様など

  1. ドキュメント

  2. 仕様

    FM 受信部
    受信周波数 76〜90MHz
    実用感度 (IHF) 10.3dBf (1.8uV)
    S/N 比 50dB 感度 16.1dBf (3.5uV)
    歪率 mono : 0.1%
    stereo : 0.2%
    S/N 比 mono : 76dB
    stereo : 72dB
    選択度 (±400kHz) 80dB
    イメージ妨害比 80dB
    スプリアス妨害比 100dB
    IF 妨害比 90dB
    ステレオセパレーション 45dB
    AM 受信部
    受信周波数 525〜1605MHz
    実用感度 300uV/m
    S/N 比 50dB
    選択度 30dB
    イメージ妨害比 50dB
    出力レベル
    FM 出力 (400Hz 100% 変調) 固定 : 0.65V
    可変 : 0〜1.2V
    AM 出力 (400Hz 30% 変調) 固定 : 0.2V
    可変 : 0〜0.4V
    総合
    電源 AC100V 50/60Hz
    消費電力 18W
    外形寸法 450(W)×100(H)×340(D) mm
    重量 6.3kg
    その他
    発売時期 1979年
    定価 44,800円