Marantz ST-54 (2号機) が到着
2023年3月25日、名古屋市の S さんより
Marantz ST-54
の修理依頼品が到着しました。
程度&動作チェック
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修理依頼者のコメント
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数年前に中古で入手してから愛用していました。
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先日、何の兆候もなく次の不具合が同時に発生いたしました。
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周波数表示がされなくなった。
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SIGNAL インジケータの表示がされなくなった。
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放送局のプリセットボタンの小さな赤いランプが消えた。
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以上の不具合はあっても、受信に問題なく AM/FM とも今まで通り聴くことはできます。
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音もデザインも気に入っておりますので、修理お願いします。
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外観
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製造シリアル番号は [MZ01022440028] で、電源コードの製造マーキングより [1989年製造品] とわかりました。
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添付された純正ではない [AM ループアンテナ] のリード線の片側がもげています。
AM はこのアンテナで最高感度になるよう調整します。
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フロントパネルは正面は綺麗ですが、天板への折り返し部分に薄いサビが出ています。
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リアパネルに薄っすらとしたサビがありますが問題ないです。
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天板は少し汚れはありますが綺麗なほうです。
底板も問題なく、脚もちゃんと付いています
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電源 ON してチェック
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FL 表示器には [FM] [AM] の文字だけ一緒に薄く光っており、その他の周波数などの表示が出ません。
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[S メータ表示] [プリセット番号表示] も全く出ません。
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FM/AM とも受信できましたが、表示が出ないのでどの放送を受信しているのかわかりません。
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やはり周波数表示の出ないチューナは使い辛いです。
まずは表示を直さないと先に進めません。
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カバーを開けてチェック
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メモリバックアップ用の電気二重層コンデンサ C509 (0.047F/5.5V) に膨らみが見られます。
交換したほうがよさそうです。
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この他には目視でわかる劣化は見られませんでした。
リペア
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ディスプレイの周波数表示などが出ない
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基板上で浮かして実装されている電源関係の抵抗を全数チェックしたとろ、R802 が断線して表示用の電圧が出ていませんでした。
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R802 を [10Ω 1/2W] に交換して周波数表示などが正しく出るようになりました。
部品番号 |
抵抗値 (Ω) |
実測値 (Ω) |
判定 |
対策 |
R230 |
100 (1/4W) |
99.5 |
〇 |
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R237 |
100 (1/4W) |
95.4 |
〇 |
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R292 |
100 (1/4W) |
99.6 |
〇 |
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R301 |
47 (1/4W) |
47.5 |
〇 |
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RA30 |
100 (1/4W) |
99.6 |
〇 |
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R801 |
10 (1/4W) |
10.0 |
〇 |
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R802 |
10 (1/4W) |
断線 |
× |
10Ω (1/2W) に交換 |
R803 |
820 (1/2W) |
10.0 |
〇 |
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R806 |
150 (1/4W) |
149 |
〇 |
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表示が正常になったので、あらためて動作をチェックしました
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FL 表示器は新品同様の輝度があり良好です。
ボタンの動作は正常です。
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[TUNING] ボタン長押しでオートチューニングしても放送局を見つけられないず、スキャンし放しになります。
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放送局に同調しても [STEREO] 表示が出ません。
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オートチューニングしても放送局を見つけられない
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FM 同調点ズレが原因でした。
これを再調整して直りました。
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[STEREO] 表示が出ない不具合も、この調整で直りました。
そうすると、これまで修理依頼者はモノラルで放送を聴いていたことになります。
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電気二重層コンデンサ C509 (0.047F/5.5V) が膨らんで劣化している
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C509 を [0.1F/5.5V] と交換しました。
容量が倍になったので、以前よりバックアップ時間が延びたと思います。
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リアパネルの端子類のハンダクラック対策
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どうしても端子のリードと基板の間で機械的なタワミを原因とするハンダクラックが発生しやすいのです。
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端子のリードと基板のハンダ付け部分に補修ハンダを行い、良好になりました。
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底板を留めるネジのうち、最前面の右端のネジ穴がバカになっている
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ネジロック剤を塗布してからネジ留めして問題解決しました。
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フロントパネルの天板への折り返し部分に薄いサビが出ている
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ダメ元で木のヘラで擦ってみたら、ほぼ完全に回復しました。
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天板に汚れがある
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添付された [AM ループアンテナ] のリード線の片側がもげている
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[AM ループアンテナ] のリード線を修復し、リード先端をハンダあげしました。
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交換部品の記録
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下の写真は交換前に基板に実装されていた、劣化または故障していた部品です。
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左は電気二重層コンデンサで、右は断線していた抵抗です。
再調整
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電源電圧チェック (VP)
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チューナ基板上のジャンパーで測定します。
修理後の電源電圧の実測値は以下のように正常でした。
VP |
標準値 |
実測値 |
判定 |
備考 |
U199 |
+13V |
+15.3V |
〇 |
チューナ用 |
U218 |
+6V |
+6.23V |
〇 |
デジタル用 |
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FM/AM 受信部の調整
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調整結果
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[レシオ検波部] [MPX] でやや大きい調整ズレがありました。
再調整で見違えるほど音質が大きく向上しました!!!
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FM ステレオセパレーションは 以下となりました。
素晴らしい数値です。
項目 |
FM IF BAND |
stereo/mono |
L |
R |
単位 |
ステレオセパレーション (1kHz) |
WIDE |
stereo |
65 |
65 |
dB |
NARROW |
55 |
53 |
dB |
高調波歪率 (1kHz) |
WIDE |
mono |
0.067 |
% |
stereo |
0.10 |
% |
NARROW |
mono |
0.10 |
% |
stereo |
0.23 |
% |
パイロット信号キャリアリーク |
WIDE |
stereo |
-65 |
-63 |
dB |
オーディオ出力レベル偏差 |
WIDE |
mono |
0 |
-0.06 |
dB |
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AM は再調整により、受信感度が少し向上しました。
使ってみました
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デザイン
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たまらなく良いマランツデザインです。
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蛍光表示器はライトブルー、LED はレッドで妖しい輝きです。
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S メータは6ポイントの LED 表示です。
T メータは無いです。
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プリセット数は [FM 16局] [AM 8局] で、これだけあれば十分です。
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プリセットボタンは自照式で、どのボタンが選択されているか一目で判ります。
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FM アンテナ入力は F 型です。
妨害電波の混入を避けることができます。
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感度と音質
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FM/AM 共、感度はかなり良いです。
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FM の音質はかなり良く、S/N が良く音に解像感があります。
AM の音質は普通です。
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値段に似合わず優秀で
高級機に近い性能
があって満足できます。