KENWOOD KT-2020 (3号機) が到着
2022年10月5日、広島県世羅郡の Y さんより
KENWOOD KT-2020
の修理依頼品が到着しました。
この機種はブラックモデルしか知りませんでしたが、シルバーモデルもスッキリとした感じがイイですね。
程度&動作チェック
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修理依頼者のコメント
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FM 放送受信時 電源 ON から3分後くらいで [STEREO] 表示が点滅を始め、しばらくすると [STEREO] 表示が消えて、インジケータも表示しなくなります。
文中にある [インジケータ] が何の表示かわからなかったので質問したところ、[MODULATION] とのことでした。
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当方現在まで、FM 受信はアンテナからではなく CATV から分波して繋いで聴取しておりました。
今まで何の問題もありませんでした。
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外観
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製造シリアル番号は [53K10901] で、電源コードの製造マーキングより [1985年製造] とわかりました。
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[AM ループアンテナ] の添付はありませんでした。
このため、AM 感度を最大に調整できないので、簡易再調整とします。
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全体的にすごく綺麗な逸品です。
キズやスレがほぼ見当たりません。
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フロントパネルは非常に綺麗です。
リアパネルも綺麗ですが、少し汚れがあり、端子類に薄いサビがあります。
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天板には2本程度の何やら黒い線状の汚れがあります。
これを除けば非常に綺麗です。
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電源 ON してチェック
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電源は正常に入り、各操作ボタンの動作は正常です。
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FL 表示の [WIDE] [REC CAL] [AM 周波数の 1000 の桁] に少し痩せがありますが、これ以外は問題ありません。
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FM 受信
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電源 ON からしばらくは正常に動作し、[STEREO] 表示も出ます。
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電源 ON から時間が経つと ・・・
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T メータの表示が赤色になってセンタから外れ、[STEREO] 表示が消えます。
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更に時間が経つと音も出なくなります。
ミューティングがかかった状態です。
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AM 受信
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カバーを開けてチェック
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内部全体および基板は非常に綺麗でゴミやチリがほぼありません。
目視チェックで劣化している部品はなさそうです。
リペア
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FM 受信で電源 ON から時間が経つと、[STEREO] 表示が消え、音も出なくなる
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主な原因は同調点調整がズレていたことです。
再調整で直りました。
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天板に2本程度の何やら黒い線状の汚れがある
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無水アルコールで汚れの部分だけ軽くクリーニングしたら、ほぼ気が付かない程度に回復しました。
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無水アルコールは溶剤ですから、やり過ぎると塗装まで溶かしてしまって収拾がつかなくなります。
再調整
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電圧チェック (VP)
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以下のように正常でした。
VP |
標準値 |
実測値 |
判定 |
J170 |
+5.6V |
+5.63V |
〇 |
J171 |
+15V |
+15.6V |
〇 |
J172 |
+12V |
+11.8V |
〇 |
J173 |
-12V |
-12.0V |
〇 |
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調整結果
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KT-2020 (1号機)
に記載の手順で再調整しました。
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[L13] で行う同調点調整が大きくズレていました。
0±10mV のところ、700mV くらいになっていました。
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フロントエンドと PLL 検波 NULL でやや調整ズレがありました。
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再調整後の特性データは以下です。
素晴らしい数値です。
項目 |
MODE |
FM IF BAND |
L |
R |
単位 |
ステレオセパレーション (1kHz) |
STEREO |
WIDE |
60 |
61 |
dB |
NARROW |
57 |
57 |
dB |
高調波歪率 (1kHz) |
MONO |
WIDE |
0.005 |
% |
STEREO |
0.02 |
0.01 |
% |
パイロット信号キャリアリーク |
STEREO |
WIDE |
-82 |
-73 |
dB |
オーディオ出力レベル偏差 |
MONO |
WIDE |
0 |
+0.06 |
dB |
REC CAL |
MONO |
WIDE |
398.4 |
Hz |
-6.3 |
-6.3 |
dB |
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AM はループアンテナが添付されなかったのでトラッキング調整はせず、IF 調整だけとしました。
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AM はループアンテナも同調回路の一部なので、使っているループアンテナがないとトラッキング調整ができないのです。
使ってみました
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デザイン
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フロントパネルは分厚いヘアラインアルミ、チューニングノブやボタンもアルミと、質感が良いです。
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プリセットメモリーは FM/AM ランダムに16局分あり、十分です。
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ディスプレイの左側にバー表示の [S メータ] [T メータ] [M メータ] が集中していて、同調状態が把握しやすいです。
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FM アンテナ入力は F 端子になっていて、不要な妨害電波の混入を避けることができます。
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FM 受信
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FM の感度と妨害電波排除能力は素晴らしく良い
です。
FM フロントエンドの性能が余程良いのでしょう。
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FM の音質は、Hi-Fi 調で、シャッキリとした高音域が特長です。
ハッとするような素晴らしくクリアな音
です。
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AM 受信
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AM IF BAND が WIDE の時の音質はかなり良いです。
感度も良いです。